不思議な彼女 塔子司 アセットディスティニー
石のやっさん
プロローグ 悪夢あるいはトマトの夢
私、塔子司は教室でついうたたねをしていた。
春の日差しは暖かく眠くなる。
それが気分のせいなのかポカポカしているせいなのか、あるいはただサボりたいだけなのか? 解らないけど、眠くなるわ。
願えばきっと、その答えも簡単に手に入るけど私は敢えて聴く気にはならないわ。
どうせ、答えは解っても理由は解らないから……
そんな事より私はなんで今朝、牛丼弁当を買わなかったのかな?
あんなに昨晩から『牛丼が食べたい』そう思っていたのに……机の中にはコンビニで買ったおむすび。鮭とおかかが入っている。
こんなくだらない事を考えていたら……
頭の中に声が聞こえてきた。
『寝坊したからだろう』
煩いわ。
別に聞いたわけじゃないないわ?
答えなくていいわ。
ただ考えただけだから。
真剣に悩んでいた訳じゃないんだから。
いちいち答えなくて良いわ。
困るような事がある時だけ、教えてくれればいいのよ。
そう思い、机に私は突っ伏して眠った。
いや、眠ろうとしていた。
頭の中に雑居ビルが浮かんだ。
此処は清和町にあるビルだわ。
清和町は繁華街から外れた場所にある町。
ここ最近、清和町にある商店街が大型スーパーの進出で潰れ。
テナントが入っていない建物が沢山ある錆びれた場所だ。
こんな場所、17歳の女子高生の私には関係ない筈だわ。
それなのに私はそんな錆びれた場所に突っ立っている。
目の前には、ネカフェと焼き肉屋が入った6階建てのビルがあり、その横には水野歯科医院という看板がある4階建てのビルがある。
私はふと空を見上げた。
4階建てのビルの屋上から何かかが落ちて来る。
それはビルの壁にぶつかりながら……
『どさり』
低く鈍い音。水気を含んだ布団、もしくは肉の塊を落としたような音。
人が落ちた音だ。
目の前にあるのは人の死体……
まるで赤く染まったアスファルトの中に潰れたトマトの様に赤く染まったガラの悪そうな真っ赤な女が横たわっていた。
女が落ちてきたビルの方を見ると……見知った顔の同級生が青い顔で立っていた。
「司――」
なに?
「司――授業がはじまるぞ! 目を覚ませーー」
あっ!?
「すみません……」
いつもの教室......
また、嫌な物を見ちゃったわね……
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