20話 追加訓練

昼の戦闘訓練が終わり、私は零式さんの家に戻ってきていた。


「結構疲れたような気がする……」


白銀さんは丁寧に優しく教えてくれた。

ただ、覚えることがかなり多かったので、なんとなく私は疲れていた。


「昼寝でもしたらいいんじゃないか?」


零式さんの声が聞こえた。


(まぁ、少しは昼寝をした方がいいとは思いますが……)

(私より先に入学した子は強い子が多いと思うので、勝てないとしても、肩を並べられるように私は人一倍頑張らないといけないと思うんです。)


私は白銀さんから借りた木の剣を握り、庭へと出た。


「真面目なやつだな。」

零式さんは笑いながら言った。


(なぜ笑うんですか……)


「いや、私は頑張るやつが好きだからな。」

「よし!」

「そこまでやる気があるなら、私が相手をしてやる。」


(えっ……)

(まだ死にたくないです……)


「安心しろ。手加減はするから。」

「私をなんだと思ってやがる。」


また黒い霧とともに、零式さんが姿を現す。

その右手には木の剣が握られていた。

「これなら安心だろ。」

「しばらくは反撃しないから、思う存分斬りかかってもらって構わん。」


零式さんは木の剣を右手に持っていた。

「ほら、早く。」


私は白銀さんに教わったように踏み込み、零式さんに斬りかかった。

剣を持っていない左側を目掛けて振り下ろした。

しかし、零式さんに手で掴まれてしまった。

そのまま剣を取られてしまった。


「……握力が足りないな、お前……」

「まぁ、握力は今鍛えられるものじゃないから、今日は別にいいが……少し弱すぎるかもな。」


零式さんは剣を返してくれた。

「続きをしようか。」


私は再び剣を強く握り、零式さんに斬りかかった。

さっきと同じ左側。

零式さんは右手で持った剣で私の斬撃を軽々と受け止め、私を押し返した。押し返された私は数歩後ろに下がってしまった。


「まだまだ……!」

私は引き続き、零式さんに斬りかかる。

防御でがら空きとなった場所に斬りかかっても、軽々と押し返される。


10回、20回と打ち込んでも、零式さんにあたることは無い。

少しづつ押されることに慣れてきたのか、後ろに押されることは減ってきた。しかしいくら打ち込んでも、零式さんにあたることはなかった。


「少し疲れただろ。」

「今日はもう終わろう。」


集中していて気がつかなかったが、私はすっかり息を上げてしまっていた。


「よく頑張るやつだな。」

零式さんは私の隣に座った。

「お前を呼んだのは翔だろ。別に好きに過ごせばいいじゃないか。」


「そうですね……」


「わかっているなら、どうしてそこまで頑張る?」

「クロが取り憑いたのは、お前が悪いわけじゃないはずだ。」

「勝手に取り憑かれた上に、監視対象にされるのは嫌じゃないのか?」


「一人でいるよりはマシだろうって思ってます。」

零式さんは驚いた顔をしていた。


「それに……」

「ここには私を助けてくれる人がいます。」

「でも、助けられてばかりは嫌だと思ったんです。」

「強くなって、誰かを助けることができるようになりたい。」

「それだけです。」


零式さんは私に微笑んだ。

「そうか。」

「それじゃあ休憩がてら、式を少し教えてやる。」

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