9話 対面。その前に

「お前から来るなんて珍しいな。」


「まぁね。」

僕は前日の話をするために、零式の元を訪れていた。


「ねぇ、零式。」


「なんだ?」

「なんかお願いか?」


大抵、僕が突然来る時はなにかお願いがあるとき。

式神によっては結晶を生成することが出来る。零式はその中でも希少性の高い「式結晶・零」を生成できる。まぁ、零式があまり作らないから希少性が高くなってる理由だけど。

式結晶は武器の素材として使われる。あとはネックレスのような装飾品。式結晶で出来た武器や装飾品は、使用者の式の性能を向上させる。式結晶の含有量に応じて上昇率は増加する。

その中でも式結晶・零は上昇率がずば抜けて多い。加えて、式結晶・零は全ての式に適性がある。本来、式結晶には適性が存在する。火を扱う式なら「式結晶・炎」。水なら「式結晶・水」などなど。火を扱う式者が適性が合わない式結晶・水を使うと、威力が減少する。しかし、式結晶・零にはそのような威力の減少などはない。


「まだ、お願いではないかな。」


零式は不思議そうな顔をした。

「まだお願いではないってことは、私の回答次第でお願いに変わるわけだな。」


「そうだね。」


「まぁ、話してみろよ。」

「期待通りの答えが出るか分からんが。」


「式霊に取り憑かれた子がいたら零式ならどうする?」


「倒すが?」


「取り憑かれた子が式霊の討伐を望まなくても?」


零式は何を言ってるんだという顔で僕を見た。

「そんなやつおらんだろ。」


「その子のお世話をお願いしたいのだよ。」


零式はより、複雑な顔をした。

「世話されてる私に子供の面倒を見ろと?」


「高校生だから子供っていうほど子供じゃない。」

「どうする?」


「話の内容がよくわかってない。」

「どういう理由で式霊の討伐を望んでいないのか。」

「なぜそのような話になったのか。」

「説明が足りとらんぞ。」


正直、理由の方は説明出来ない。聞けなかったし……

「理由は分からない。」

「ただ、その子に取り憑いた式霊はその子の指示に従うよ。」


「それは式霊じゃないだろ。」


「式域の展開が出来るから、式霊で間違いないと思うよ。」

「召喚系の式霊じゃ、式域は生み出せないでしょ。」


零式は目を丸くして驚いていた。

「式域の展開ができるって、だいぶ強くないか?そいつ。」


「強かったよ。」

「僕一人じゃ、負ける可能性すらあった。」


「その傷はそういうことか。」


零式は深く考えをめぐらせている様子だった。

零式の反応から、あの式霊は前例があまりない、珍しい式霊であることが分かる。


「よく分からんが……」

「一回会ってから考えてもいいか?」


少し予想外の答えが帰ってきた。

僕は断られると思っていた。


「明日にでも連れてくるよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る