500文字程度の小話詰め合わせ

優夢

お題「ひそやかな雷鳴」

「わん!」


 愛犬のトイプードル、生後5ヶ月のチョビが吠えた。

 ふだんめったに吠えないおっとりさんなのに。



 来訪者なし、大きな音なし、晴れた空、いつも通りの昼間。

 チョビは私の足の間に潜り込んできた。なにか驚くと、座ってようが立ってようがチョビは私の足にすがり付く。前触れがないので転びそうになるが、今回私は座っていた。



 だっこすると、チョビのしっぽはぺったぺたに下がって、ぷるぷる震えていた。

 なにもないのになんなの?

 まさかお化け?

 人間には見えなくても動物には見えるって言うし!



 5分後。

 急変した天気は、ザアザア雨と雷光をもたらした。

 たまに空が光るが、雷のごろごろ音はしない。かなり遠いのだろう。



 人間の耳に、音はしないのに!



 チョビは震え、硬直し、私の腕でおしっこしてしまった。

 犬も人間も丸洗いになった。

 人間に聞こえない雷鳴でここまで怯えるなんて。



 ドッグトレーナーさんに相談にいこう。

 本気の雷鳴を聞いたら、チョビ、気絶しちゃうかも。

 きっと、生まれて初めて雷を聞いたんだね。



 こわかったね。ママさんが守るから、大丈夫だからね。

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