死体が歩いているのに、何故そんなに受け入れるの早いの?〜私が初めて“それ”と出会った日〜

@rindou0212

第1話

ここは某県のとある高等学校。生徒数はそんなに多くはないが、地元ではそれなりに有名な学校だ。生徒達は仲が良くとても平和な日常を送っていた。

そんなある日、事件は起きた…この日は天気が悪くどんよりと曇っている日だった。

昼休みが終わって、掃除の時間に自分と幼馴染で親友の椿と高枝切りバサミを使い校庭にある木の剪定をしていた。

剪定は楽しくはないが、椿と楽しくおしゃべりをしながらダラダラと作業をしていた

すると、椿は校門の方を向き指を指しながら「楓…あれ、何かな?」と不安気に言う

指先をたどり視線を向けてみると、“それ”はいた。

ふらり、ふらりと今にも倒れそうになりながらも、校内に入ってきて前に進み続け校舎に向かっている。

「不審者かな?こっちには気がついていないね、先生達がどうにかしてくれるよきっと」

と、不安な気持ちをグッとこらながら冗談のように言う。

椿は不安そうな表情をしていたが、「そうだね…」と無理やり納得したように笑っていた。

剪定作業に戻ろうとした時に、校舎内から耳をつんざくような悲鳴が響き渡った。

そして、校内が一気に騒がしくなった。

何が起こっているのかも分からず、自分たちは体が固まってしまいその場に立ち尽くしていた。

そうしていると、一人の男子生徒が校舎内から飛び出してきた。

「やめろ!離せ!…ぐあぁ!」その男子生徒と“それ”はもつれているように見えた

転んでしまった男子生徒に“それ”は覆い被さり何かをしている。遠くて見えにくいが、男子生徒は抵抗するも、しばらくするうちに動かなくなってしまった。

「え?…どう言うこと?」と椿は呟く。椿の方を向くと顔色は悪く少し震えているようだった。

「分からない…“あれ”は一体なんだろう?」目の前で起きている現象が理解できずに呆然としてしまうが、頭の中では、早く逃げろ!早く逃げろ!と警鐘を鳴らしている。

だけど、体は動かず、膝がガクガクと震えているだけだった。

早く逃げろ!早く逃げろ!早く逃げろ!と頭の中でループしている。

「ひっ…」椿は男子生徒に覆い被さっていた“それ”が顔を上げた様子に小さく悲鳴をあげたことで、はっと我に返った。椿の手を引いてその場から走り出す。後ろから“それ”が追いかけてきているのがわかったが、振り返ることはなく無我夢中で走り抜けた。

必死に走って、走って、走って、たどり着いた場所は体育館。幸いなことにそこには誰もおらず、静かな空間が広がっていた。

二人で身を隠すために体育館倉庫に入った。倉庫内に誰も入ってこないように入り口の鍵をしっかりと閉めた。

倉庫内は少し埃っぽいが、それは我慢できる。

倉庫に誰も入ってこないように、扉の鍵を閉めて二人でマットの上に座り込む。

安全な場所にたどり着いたことで、緊張の糸が切れたのか大きなため息と共に体の力が抜ける感覚があった。

ふと自分の手元を見れば、剪定に使っていた高枝切りバサミを持っていることに気がついた。

「・・・なんで枝切りバサミを持ってるんだよ、もっと違うものを持ってきたらよかった」なんて独り言まで呟いてしまった。

このあと自分たちがどうなるのだろうか…

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