死霊3種盛り
「ごの"死体は材料が?・・・・・・な"ん"で?マリアはこの悪臭の中、普通に居られるんだ?」
「トップ様も大丈夫な筈ですよ。クワコも同じです。まだダンジョンマスターとその眷属としての自覚が芽生えていないのでしょう。」
そう言われた瞬間、ある事がトップの中を頭の中を過った・・・いや、切り替わったって言った方が正しいだろう。
ダンジョンマスターは人型であるだけで、前世の人間とは別種である。
マリアの一言でその自覚が芽生えた。
それによってさっきまで嫌に感じていた死臭が何も感じなくなった。
死臭がしなくなった訳でも、死臭がいい匂いになった訳でもない。
例えると臭くても自分の体臭は気にならないように、死臭が一切気にならなくなったのだ。
それはトップに抱かれたクワコもだった。
「それでは死臭が気にならなくなった所でチュートリアルに戻ります。」
「死霊創造か、ダンジョンマスターってそんな事も出来るんだ。」
「いえ、今のところトップ様だけです。」
死霊創造
死体を材料にして死霊系の魔物を生成するダンジョンマスターの術だが、これは冥界の神担当のダンジョンマスターだけの術である。
「そして、出資神の中で冥界の神は一柱ですので、トップ様だけです。」
「なら、冥界の神以外のダンジョンマスターには死霊創造の代わりの術があるの?」
「ありますよ。配下契約です。一言で言ったら生者の配下を作るのが契約で、死者の配下を作るのが創造です。どちらにも一長一短がありますが、創造の場合は数です。」
取り敢えず、死霊創造を試してみる事にした。
その一
ダンジョンマスターの血を一滴を死体に垂らす。
そのニ
卵の時のように自身の魔力を流す。
以上。
「うわっ?!何か煙が出た?!」
「ダンジョンマスターやその眷属には関係ありませんが、その煙は生物にとって毒ですので、今後、植物とか眷属関係なく買う場合は気をつけてください。」
「この煙集めたら毒煙玉とか出来ない?」
ダンジョンの景品としてこの煙はいけるんじゃね?と思ったが、マリアが言うにはこの煙は密閉しても霧散して無くなる為、煙玉には不向きらしい。
「一体の死体から三つの配下。確かに数的利点だな。その分、質が劣る感じ?」
「いえ、そこは死体によります。正しくは質を上げづらいです。契約なら契約する強い魔物や欲しい能力のある魔物と契約する方法を考えたら良いですが、創造の場合は死体の質、死ぬ瞬間の気持ちなど個体差があります。」
「今回は普通?」
「普通です。質が高いのはこの3種じゃなかったらと思っていただけたら大丈夫です。」
ゴースト
死体の魂の抜け殻が魔物化したものである。
実体はなく、物理的に倒すのは不可能。
スケルトン
死体の骨が魔物化したものである。
骨だけだから、軽く動きは速いが、筋肉などがない為、攻撃力は低い。
骨が弱い場合、物を持って戦う事も困難である。
肉塊
死体の骨、魂の抜け殻以外の血肉が魔物化した物である。
動きと身体はスライムに似ているが、無臭のスライムと違って、死臭が漂う血肉がブヨブヨと動いているように見える。
でも、他に臭いがこびりつくなんて事はない。
「この死体の数なら10体ずつくらいはいけますね。」
「罠と合わせたらより訓練施設として質が上がるな。」
トップは次々と死体を霊と骨と肉にしていったが、3体だけ創造出来ない死体があった。
「何だ?この死体?損壊激しいな・・・手足や目、耳、ここは心臓と肺か?幾つもないな。最前線で戦ったのか?」
「他の死体の損傷が少ないと思っていましたが、この三体が負傷兵を逃がしながら戦ったのでしょう。即死している遺体以外は負傷から来る感染症か、出血死でしょう。」
死体を見ただけで大体の戦況を予想出来るのは天使だからなのか?マリアだからなのか?結構これは重要な情報である。
「私だからですよ。トップ様の担当の冥界の神は戦死の神リタイア様です。その為、私の職場は戦や決闘など殺し合いを見るのが日常でした。人では想像つかない程の年月も見て、処理してきましたので、死体を見ればある程度の戦況、対戦相手は想像、推測出来ます。」
マリアの推測ではこの死体達を殺したのは傷跡からして大きな四足獣の素早く爪で切り裂く攻撃を得意とした種。
三体には引きずって運んだ様な後がある所から戦闘後に回収された。
食べられた形跡がないところから回収したのは味方。
相打ちか、敵が死んで満足して帰ったのかは分からないが、恐らく後者。
つまり、殺してきたのは人は食べない種だが、縄張り意識が強い種であり、この死体達は誤ってこの魔物の縄張りに入ってしまった馬鹿な死体か、それとも何か理由があって縄張りを変えたこの魔物に遭遇してしまった不運な死体かである。
「凄い。そんな所まで考察できるのか?」
「この程度ならあの職場で働く天使なら誰でもできる事でございます。それより気になるのはこの三体は他の死体より明らかに強者です。それを殺しているとは・・・思っていたより敵は強大です。」
「縄張りを持つ種ならこちらから攻めない限り、襲って来ないんじゃないか?」
外の連中も気がついているかもしれないが、巫女を通して此方の考察を伝えたら戦闘は避けれる可能性はあるのでは?とトップは考えたが、それは甘い。とマリアは言った。
「三体にはそこまで引きずった跡がありません。つまり、すぐに複数人で持ち上げれる場所だったということです。」
最初から持ち上げて運べるなら引き摺るなんて死体を雑に扱う事なんてしない筈である。
つまり、安全圏までは引き摺る者達と周りを警戒する者達で別れていた。
その上、ダンジョンの収縮から死体が届けられる時間を考えると戦闘は村近くであり、縄張りが村を含んでいる可能性が高い。
「今はこの三体を倒した時の傷を癒しているのか?それとも、この三体が村の中でもどの程度の実力者なのか?を探っているのでしょう。賢い個体です。」
魔物が何も考えず無策で追撃して来ない所からして三体が如何に死力を賭して戦ったのか、推測できた。
「マリアからしてこの三体の実力は?」
「事前調査の情報からしてトップ3でもおかしくない実力ですね。」
「つまり、その事に魔物が気がつくまでに対策をするのが最初のミッションか。」
文明崩壊を免れる道はその魔物の攻略が鍵だと確信した。
「取り敢えず、この三体の死体を創造しましょう。」
「出来ないけど。」
さっきから血と魔力を垂らしては流しているのに一向に死霊にならない。
「恐らく、トップ様からして質が高すぎるのでしょう。」
「つまり、レベルが足りないって事?」
「はい・・・・・・ここは一度一気に流してみましょ?!」
マリアが言い切る前にクワコの出した糸で手首を切ってたっぷりの血を滝のように三体の死体に垂らした後、全ての魔力を一気に流し込んだ。
「こ、これはまずい!・・・貴方はちゃっかり逃げてますね。」
トップの血管を抑えて、出血を止めた後、魔力欠乏症で倒れたトップを抱えて後ろに下がった。
クワコはいつの間にか下がっていた。
「死んだ・・・と思ったが、まさか、こんな形で生き返るとはな?」
晴れた煙の向こうから現れたのは六本脚の腹が膨れた女型のケンタウロスだった。
「気がついた様ですが、生き返っていません。・・・それに早くその付近の布で最低限肌を隠してください。死霊と言っても女性の胸を異性に見せるのはどうかと思います。」
「女性?・・・・・・はぁ?!何だ?これ!?!」
いきなり自分の胸を揉みしだくケンタウロスを見て、マリアとクワコは痴女の変態を見る様な侮蔑な視線を向けていた。
「その反応からして貴方は生前男だったのですか?」
「当たり前だ?!カプリ?とエアヴは?・・・この服は?!」
「どうやらもう2体の死体は貴方の知り合いらしいですね。」
「死・・・・・・体・・・?守れ・・・なかった・・・のか?」
絶望の表情を浮かべて膝から崩れ落ちるケンタウロスを見て、このケンタウロスはあの2体の雌のケンタウロス死体より先に死んだらしい。
「ルドーは?!弟を知らないか?!」
「知りません。というより死体が誰だったのかなんて知りません。さっきみたいにそこに転がる遺品で確認したらどうですか?・・・あまり壊さないでください。そんなのでも今の私たちには貴重な品なんですから。」
マリアがそう言うとケンタウロスは慌てた様に一箇所に集めていた遺品を乱暴に漁り出した。
「え?・・・・・・なに、この力?」
「おかしい事を言いますね。ケンタウロス族ならその程度の石器、壊すなんて余裕でしょう。」
御守りとして持っている物なのか、ほとんど死体が身につけていた石製のアクセサリーをケンタウロスが誤って握り潰していた。
そんな自分の握力が信じられないのか、自分の手のひらの上で砂と化した残骸を見つめて呆然していた。
「俺は・・・体が弱かったから・・・・・」
「技量に長けた人ですか、惜しい人を亡くしましたね。」
死体から感じた強者オーラからして身体の弱さを技量でカバーしていた人だと察したマリアはこれからの村の発展に重要な人を亡くしている事を残念がっていた。
そんな事を言うマリアが信じられないのか?驚いた顔でケンタウロスはマリアを見ていた。
「そんな事、初めて言われた。」
「欠陥品扱いされた感じですか?愚かな事ですね。」
悲しそうに言うケンタウロスからしてこの人が村でどう言う扱いを受けていたのか?を察する事なんて容易だった。
「欠陥品・・・その通りだ・・・俺は身体が弱く、狩りもこの年までろくに出来なかった。やっと役に立てると思っていたのに・・・な。」
「慰めになるか分かりませんが、貴方の技術は私達、この方の力になります。落ち込む必要はありません。・・・これからはこの方による正当な評価の元、判断しなさい。そんな節穴な連中など忘れなさい。」
死霊となったこのケンタウロスからしたらそのうち、村に居た時など瞬きほどの時間になる。
気にするだけ無駄である。
「女の腕で眠る者が強いのか?」
「長を戦闘能力で測るのは馬鹿な事ですよ。長に必要なのは魅力です。この人になら付いていけるという魅力、カリスマ、親しみやすさ、必要なのは表面的な力ではなく、もっとより深いものです。それに・・・・・・」
「?!」
聖母の様に微笑んでトップの事を語っていたマリアの表情が一変した。
「この方を舐めない事です。もし、裏切るなんて事をしたら、この世の地獄を見ますよ。」
「・・・・・・肝に命じよう。」
「よろしい。詳しい説明はこの方が起きてからにしましょう。貴方の種族もトップ様が起きるまで分かりませんしね。」
頭を膝に乗せてトップを寝かせるマリアの表情は無表情の恐ろしい雰囲気から一変して、元の聖母の様な微笑みに変わっていた。
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