11.近づく二人-1-






「皆様は【幻想の雷】というパーティーのメンバーなのですね」


「「「「はい」」」」


 ちなみに冒険者ランクはDである。


「携帯食って不味いから身体が温まる料理が食べられるのは何よりの馳走だったりします」


「それ、分かります!実は俺も行軍の時は──・・・」


 今回は時間がなかったので固形ブイヨンを使ったが二種類の肉が入ったポトフ、オーク肉とコカトリスの肉を挟んだ二種類のサンドイッチであったが、旅をする者にとってシェリアザードとレオンハルトが用意した料理は贅沢であるらしく四人からは好評だった。


「そういえば自己紹介がまだでしたね」


 四人は名乗る。


 少年漫画に出てくるヒロイン!と言わんばかりの可愛らしい顔立ちをしている小柄な少女は攻撃系の魔法に長けている魔法使い───正確に言えば式神という使い魔を操る陰陽師で名前はマリヤ。


 槍を手にしている魔族の青年はジェラールで、自分の魔法で出した火や雷を武器に纏わせる事で敵に大ダメージを与えるのを得意とする。


 リュートを手にしているのは吟遊詩人のジェレミー。吟遊詩人だから楽器を奏でながら詩を吟じるしか出来ないと思うかも知れないが世界各国を旅しているので己の身を護る為に鍛えているだけではなく武器と体術を身に付けているのだ。


 白いフードを纏っている落ち着いた雰囲気の女性はフェリスで、防御系と回復系の魔法を得意としているので主にパーティーの後方支援を担当している。


 彼等は同じ町で育った幼馴染みであるらしく、名声と一獲千金を夢見て冒険者になったとの事だ。


「ワタガシちゃ~ん♡」


「モコモコ~♡」


 互いに軽く自己紹介と世間話をした後、夕食と焚火のお礼で今夜は自分達が見張りをするから休んで欲しいとジェラール達に言われたのでシェリアザードとレオンハルト、ワタガシは四人の言葉に甘えて静かに目を閉じるのだった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『・・・ぁ・・・ぁ』


 目の前で血の海に倒れているのはマリヤ、ジェラール、ジェレミー、フェリス、ラクシャーサだった者───。


 四肢の全てが力ずくで千切られていたり、首と胴体が分かれていたり、手足があらぬ方向に曲がっていたり、身体の半分が引き裂かれていたり───まるで壊れてしまった人形のように血に塗れて倒れている仲間達の姿に顔から血の気が引いてしまったシェリアザードは引きつった悲鳴を上げる。


『レオン!?』


『番様がジュスティス陛下と魂魄の契りを交わして下さるのであれば、レオンとやらの命だけは助けましょう・・・』


『に、逃げろ、シェリー・・・』


『レオン、レオン・・・』


 人間、ハイエルフ、魔族が力を合わせて挑んでも神の代行者にはどう足掻いても勝てないのか───。


 利き腕である右腕と左足をジュスティスの鋭い爪で切り落とされ、折れた肋骨が肺に刺さって息をするのも苦しいはずなのに、それでもなお自分の身を案じてくれているレオンハルトの姿にシェリアザードは涙を流す。


 シェリアザードの治癒魔法は欠けた四肢も、内臓も完全に元に戻せるのだ。


『わ、分かり、ました・・・』


 事切れているラクシャーサ達に治癒魔法を施しても助からないが、辛うじて生きているレオンハルトだけは助けたい一心でシェリアザードはジュスティスと魂魄の契りを交わす事を承諾してしまう。


『人間の分際で私にとって魂の片割れとでも言うべき、我が番を愛称で呼ぶとは・・・万死に値する!!!』


 本来の姿───一対の翼を持つ巨大な白竜の姿になったジュスティスはレオンハルトを踏み潰す。






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