ガラスのカラス

まえとら

ガラスのカラス

ガラス職人の男が、ひとり山奥で工房を開いて暮らしていました。


人付き合いが苦手で、人間関係が面倒くさい。

けれども時々、無性に淋しくなるのです。


自分でも、どっちつかずで面倒な性分だと思っていました。

ガラス工芸品を作っている時だけが、楽しくて好きでした。


 


そんな男の小屋に、ある日カラスがやってきました。

男は「うるさい!」と追い払いました。


 


数日後、カラスたちがよってたかって、一羽のカラスをいじめていました。

そのカラスは、尻尾が短かいカラスでした。


男は見て見ぬふりをしていましたが…

気がつくと、カラスたちの群れからその尻尾の短いカラスを助け出していました。


 


男はカラスを手当てして、森へ返してやろうと思いました。

ところがそのカラスは、小屋から離れようとしませんでした。


それから、いつのまにか一緒に暮らすようになりました。


 


男はガラスのカラスを作りはじめました。

尻尾の短いカラスもお手伝いをしました。


 


一緒につくった、ガラスのカラス。


完成したガラスのカラスのその隣は、尻尾の短いカラスのお気に入りの居場所となりました。


 


一人と一羽と一つ。


 


窓辺に並んで、外の景色を眺めました。


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ガラスのカラス まえとら @mae10ra

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