月の子と常闇の街 

観音開 禅

第1話 本能との遭遇


すとん⌒⭐︎



世界が、音もなく落ちていった。




さっきまで一緒に散歩していた犬・モクは__

掌サイズのキーホルダーになっていた。



「え、ええーと。モク、だよね」



辺りを見回すが、そこにあるのは見知らぬ夜。


誰もいない、静かな場所。

心の奥底で願ってた場所だった。


けれど春の気配はない。

空気は重く冷たい。

どんどん近づいてくる孤独が胸を締め付ける。


さっきまでいた世界と切り離された歓喜と焦燥。


どうしてここにいるのか、

どうやって戻るのか、

何も解らない、ただ独り。


そんな時、風が

血と花の匂いを連れて来た。


血が溶け込んだような赫い瞳

穢れを知らない純白の髪

深い夜の中でも、その存在感は圧倒的だった。


「おまえ、何者だ?」


その声は無垢な氷の様なのに、確かな強さを帯びていた。


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