短編②
ひろろ
短編②
なにもないところだった。
周りは雪のような見た目の粉に囲まれていた。
冷たくはなかった。
少しだけ口に入れてみた。
味はなく、ただ口にザラザラとした不快な感触が残っただけだった。
一面白い粉だらけ。
そんなところに私は一人で立っていた。
「人が多すぎるんだよね」
壁にもたれてかかっている隣の彼女が呟いた。
周りでは人々が行き交っている休日昼間の名古屋駅に二人は佇んでいた。
「確かにね」
僕は気もなく返事をする。
「8割ぐらいいなくなるべきだよ」
物騒なことを彼女は言う。
「一度自殺してみたいな。」
続けてボソリと彼女がつぶやく。
「あんまりそういうことを言うもんじゃないよ。」
僕は諭すように言った。
はあ、と彼女はため息をついてスマホを取り出した。
「いつまでこうしていればいいんだ」
機嫌が悪いことをアピールするように僕は言った。
「アイツが来るまで」
彼女はそう言うと、キッと前方を睨んだ。
一瞬、周りの音が遠ざかる感覚がした。
どこか懐かしい感覚がした。
ーそう、これは偽物の世界なんだ
気づいたら別の場所にいた。
ー始まりの場所だ
雪のような見た目の粉に埋め尽くされている世界。
そこで僕は一人だった。
ーここが本当の世界なんだね
僕は直感的に気づいた。
そしてここにいてはいけないことにも気がついた。
僕は歩いた。あてもなく。
一面の白い世界の中を。
短編② ひろろ @daimaru
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