薄ら

白川津 中々

◾️

目覚ましを止める。


いつもと同じ時間、いつもと同じ朝。しかしどうにも体調がよくない。疲れだろうか。仕事を休みたいなと思うも熱が出ているわけでもない。行かねばならないだろう。朝食を用意して妻を起こし、食卓につく。


「……」


「どうかした?」


妻の様子が何かおかしい。


「ううん。なんでも」


「そう」


それから会話は終わり、支度を整え出社。妻の態度が引っかかる中仕事を行う。


「また失注だって」


作業中、聞きたくもないネガティブなニュースが耳に入る。


「今月多いな。ボーナスは期待できんなぁこれは」


「転職考えるか」


次のある人間はいいなと胸の中でぼやきつつ一息つきながらメールを確認すると健康診断の結果が出ているので眺める。ところどころに再診を勧める項目。重篤な症状は出ていないものの、危険性はあるそうだ。


「まぁいいか」


納得させるように呟いて仕事を再開。定時を過ぎたあたりで空腹を覚えたためコンビニへ。つい買いすぎてしまいカード払い。口座から引き落とされるデビット式だが、今いくら入っているのか、今月どれだけ使ったのか、目を逸らす。


会社に戻り残務を処理して退社。みなし残業は20時間だが、超過分は出ない。違法だと突きつけてやりたいがそんな勇気はない。


家に帰ると妻はカップラーメンを食べていた。簡単に料理を作り、一人で処理して片付ける。妻は食卓でスマートフォンをつついていたが、夫婦の会話はない。何かしたかなと悩む。


寝室に入り、ショート動画を見て過ごす。そのうちに日付が変わり、歯を磨く。吐き出す泡には血が混じっていた。水が、染みる。


再び寝室。電気を消してベッドに入り目を閉じるも考えがぐるぐると頭の中で回り眠れない。結局スマートフォンを取り出し、ニュースなどを見て過ごす。


毎日が、薄らとした不安に覆われている。

喜びが、楽しみが、隠されていく。

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薄ら 白川津 中々 @taka1212384

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