甘い幻

@tori-kuroneko

第1話

「ずっと朝からにやついているね」

そう口の悪いあなたに言われた

あなたの事考えていたからだよ

そういえたらどんなにいいか


あなたとの出会いは、たまたま入ってお店のカウンターで隣の席だった人

お酒が進むと同性だったからか自然と話すようになり、意気投合していつのまにか連絡先を交換し、たまにこうして飲む仲になっていた


そのうち、私が惹かれていった

もしかしたら初めて会った時、目と目が合った時にはそうだったのかもしれない


口は悪いけど、私の事を思って言ってくれる心優しい人だ

前も「目が合っただけでその気になるのは悪い癖だよ」と言われてドキッとしたし…


ある日、いつものお店で食事をしていると

後ろのテーブル席では、仲の良さそうな家族連れが楽しそうにご飯を食べていた

無意識にその家族連れに自分達を重ねていた


いやいや、何してんだ

慌てて頭から消した

家族連れに自分達を重ねるなんて、いい大人がこんなに恋してるんだなー


『好きだな〜』

「え?」

『好き』

「わたしも好きだよ〜こんなに素で話せる人初めてだし」

『わたしの好きとあなたと好きはきっと違う』

「…そうなんだ。…気持ちは嬉しいけど、その気持ちには答えられないな」

『…分かってる。わたしも伝えるつもりなかったのに、伝えちゃった。…困ったよね。…ごめんね。…じゃあ、帰るね。』

そう言って、私は店を出た


はぁ、なんで言っちゃったんだろ

言わなかったら、今の関係続けれたのに

私のバカ…でも言いたかった

言った事には後悔はないな


バイバイ、好きな人

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

甘い幻 @tori-kuroneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ