ユニークスキル【脱毛】で、世界を敵に回す方法

@aaaa2048

第1話 進路

毛利断は、退屈が何よりも苦手だった。


それは、断がまだ小さな子供だった頃から変わらない。


普通の子供たちが夢中になるような遊びも、断にとってはすぐに飽きてしまうものだった。


知らない街に1人で歩いて探検に行ったり、アリの巣に洗剤を流し込んだり、そんな「刺激的な遊び」に彼は目を輝かせた。


しかし、そんな彼を親や教師は否定した。


「なんでこんな子に育っちゃたのかしら」とか「もう絶対にこんなことしないで」とか……。


まあ、今考えると、彼らは至極真っ当なことしか言ってないのだが……。


それから十数年。毛利断はごく「普通」に高校生になった。


教科書に書かれた公式をひたすら暗記し、部活で汗を流し、友人と他愛ない話をして笑う。周囲の生徒たちと同じように、断もまた、流れるままの日常を送っているように見えた。


だが、彼の内面には、幼い頃から変わらない「退屈」への嫌悪が燻っていた。


「カリスマ」とか呼ばれている教師の授業も、人気ゲームタイトルの最新作も、断にとってはすぐに先が見えてしまう、単調なものに過ぎなかった。


成績は常に優秀で、教師からは「もっと上を目指せる」と期待され、友人からは「羨ましい」と言われることさえもあった。


しかし、その全てが、断にとっては「面白くない」の一言に尽きた。


高校の屋上から見える、いつもと変わらない街並み。あの日の公園と同じように、世界の全てが色褪せて見えた。


何かが足りない。この「普通」の先に、本当に自分が求めるものがあるのだろうか?


高3の夏、進路選択を目前に控え、断は漠然とした焦燥感に駆られていた。


断の進路希望調査票は、最後の最後まで空白のままだった。


親や教師は、彼の優秀な成績を見て有名大学への進学を熱心に勧めた。


世間一般から見れば、それは輝かしい未来への道筋だった。


しかし、断の心には、これまで経験してきた「普通」の何倍もの退屈が積もっていた。


大学に進学し、就職し、家庭を持つ――その全てが、まるで誰かに決められたレールの上をただ進むだけの、色のない風景のように感じられたのだ。


「先生、俺、大学には行きません」


面談室に響いた断の言葉に、担任教師は目を丸くした。両親の期待も、周囲の羨望も、彼には何の重みも持たなかった。


そして、断はこう言い放った。



「先生、俺は探索者になります」





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