夜木くんは隠している。
よこしま。
序章「怪しいまじない屋」
出会い
自分の置かれた境遇を誰よりも理解していたから、暇が苦痛だった。
3年の夏から学校にはいけず、条件が良い遠くの高校に受かるだけして、そのまま中学を卒業した。
春休みの今は、養護施設から手配してもらった家に住んでいる。
少し前から、夜木は暇つぶしにブロクをたくさん読んでいた。
ある日、好きなライターの記事を読み漁っていた夜木は、不思議な記事に辿り着いた。
"まじない屋の体験レポ"
淡々としたタイトルで飾られたそれを、無差別的に読み漁っていた夜木は、何とも思わず読み進める。
夜木の好きなライターだが、かなり前の記事であり、今ほど面白くなく退屈な文だった。
しかしそれとは関係なく、テーマに惹き込まれた。
そのテーマとはまじない屋という、人にかけられる魔術の中でも、高度な術を取り扱った店を体験し、取材したものであった。
そのブログの中で取材で紹介されていた、"容姿を全く別の姿に変え別人になるまじない"の一節が、夜木の頭にずっと残っていた。
オカルトじみてて馬鹿げていると、信じるに値しないと、別の記事を読み漁ってはそれを頭から追い出そうとしても、本人の意志とは裏腹に、気になる気持ちは大きくなった。
数日後、夜木はブログで見たまじない屋を訪れることにした。
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