第4話 ニファの為なら、あいつ俺のこと倒してきそう(by神)
「なぁ、お前も見たか?神様!」
「あぁ…神様のお告げ来たときはこれから俺TUEEE展開でも始まると思ってたんだけども、まさか」
「「全国民に
――そう。あの神のお告げは全国民に来ていたらしい。けれどもそのお告げの内容は皆一言一句同じ内容で、私のように神と会話をしたものは1人としていなかった。
つまり、これからくる愛し子が実は平凡な女性であることや、彼女によって
そんな中で私が愛し子はただの人である、ついでに私の婚約者はこの国を滅亡させる悪役令息だ、とでも言えば、即刻首と胴体がパッカーンになるのは目に見えている。――であれば私がやるべきことは…
*****
ある、月の輝いた夜、
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!だ、だ、だだ誰だ〜〜!!ぼ、僕のな、名前をししし、しらないのか?!ぼ、僕はなぁぁ…」
「アシュルス・ベルタリー。帝国の能無し豚…だろう?腹黒王子殿?」
…おや。
「…何故分かった…、いや神はなんでもお見通し、と言ったところか。」
「…なぜ能無しの
「…この世界は実につまらない。少し知恵が回るだけでこの世のほとんどを理解できてしまう。全てが単純すぎるんだよ。
そんな世界で頑張るフリをするのも面倒でしょうがないんだ。だからこうして8年間能無し豚として生きている。存外いいものだよ?
嫌われ者の豚というのは。
どこへ行っても面白いほどの人間の悪意が降りかかる。それが私にとっては逆に心地よく感じられるんだ。
どうだい?分かってくれたかな?神様?」
「………で?」
「………ん?」
「本音は……?」
「いや…これが本音さ。この世に飽き飽きして…」
神が何かよくわからないところから、ある本を取り出して大声で話し始めた。
待て待て待て、その臙脂色の表紙に鋼鉄製の鍵を取り付けた本は…
「…‘㊙︎ニファの可愛らしいところ 厳選!!500 〜ver1〜 第1章 お茶を飲むニ…」
「申し訳ない!僕としたことが神に偽りを申し上げてしまった!私はニファのことが大好きすぎてニファを至高なる存在にするために自分が帝国史上最悪のクズ男になって、ニファにクズ男に捨てられてから、最高にいい人生を送ってもらって、その人生が世界中で称賛されてニファをさらに世に広めていきたい!!!!そのために演じているんです!!」(息継ぎなしおよそ3秒)
神が顔を引き攣らせながら言った。
「……お前、拗らせすぎじゃないか?おそらくニフェルと同等…いや、それ以上の知性があると言うのに…それにお前、
「…私は彼女に最高の人生を送ってもらいたい。彼女の幸せのためだったらなんだってする。…そして彼女は私に恋愛的な好意を持っていない。そんな中で私と結婚させるなんて彼女を不幸にするのも同然!!
私なんぞは将来変な女に、馬鹿みたいにデレデレになってニファと婚約破棄するも、結局その女がヤバいやつで王位継承権を奪われて国外追放され、世間から『ニファ様があんな男に捕まらなくて良かったわ!』と言われる役ぐらいしかできないんだ!」
神は思った。こいつ、馬鹿だと。――
「はぁーーー(大きなため息)。お前、ニフェルのことになると知能1くらいになるタイプか?」
なんだ、こいつは。私の秘蔵の『㊙︎ニファの可愛らしいところ 厳選!!500 〜ver1〜』(通称ニファ本)を音読しようとした挙句、このニファへの想いを、天地がひっくり返るほどの愚劣、歴史に刻む価値すらない最低最悪の茶番劇も甚だしい!!などと嘲るとは…(※そこまでは言ってません)
「何を言っている!私のニファへの想いはこの世の誰にも負けない!ニファのためなら私は死…」
「その考え方から間違っているだろう。そもそもなぜお前と彼女がくっつくことが彼女の幸せにならないんだ?」
「?だからそれは彼女が私を望んでいないからで…」
「お前、ニフェルに‘アピール’をしたことがあるのか?」
…アピール?
*アシュルス百科事典 P28304 3行目 アピール (名)①広く他人に向かって自分の考えなどを訴えかけること。また、その訴え。また、強調して注意や関心を向けるようにすること。② 人々に受け入れられること。また、人を引きつける魅力*
「………意識して行ったことはないな。だが、アピールすることとニファになんの関係がある?」
「はぁーーーーーーー(とても大きなため息)、お前、何もせずにただ突っ立てるだけでニファに好かれるとでも思っているのか?」
「だが、今の時点で恋愛的な感情を持たれていない時点で…」
「はぁーーーーーーーーーー(とてもとても大きなため息)!お前、今何歳だと思っている?」
「私は8歳だ。ちなみにニファは現時点(22:45)でこの世に生を受けてから5年と83日と7時間42分だ。」
「(この男相当ヤバいな…)……まぁ、とにかくお前たちはまだ子供だ!愛なんて大人な感情、知っている方がおかしいんだ。つまり、これからお前たちが成長する中で、お前がニフェルにいい男として認識されるようになれば自然と彼女はお前に恋心を抱くようになるだろう。」
「いやでも、そんな彼女を洗脳するようなこと…」
「ちなみにお前がずっとこの調子で行くんだったら、ニフェル、私の妻にするから。」
「死んでも彼女を虜にして見せる…!!」(コンマ0.1秒)
「あぁ、その調子だ。まぁ私に彼女を取られないようにせいぜい頑張りたまえ。…ちなみに、あの極秘の本だが…その…流石に彼女のプライバシーをもう少し考えてあげたほうが…いいと思うぞ?」
…ニファ本を見られたのか?!
ズギャァァァァァァン(ニファ本を見られたことと、気まずそうにアドバイスをもらったことによる精神的ダメージ!!)
「おい、ま…」
呼び止める前に神は消え去っていた。
――しかし新しい視点を見つけられたのは素晴らしい成果だ。私で幸せにするのではない。私が幸せにするのだ。
待っててくれ。愛しのニファ。私の唯一。
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