神示評価
万物に宿る神や聖霊、自分の国でいうならば八百万の御主による評価。
所属する国や言語、宗派によってレイアウトが変わったりするが大まかな基準は共通している。
そう基本的なクラスレベルの到達点は
1が初心者、3・4もあれば中級、5を超えれば一人前、7・8もあれば高段者であり、10に到達すれば免許皆伝。
繰り返しになるが、クラスのレベルは絶対評価だ。
自分で決めた数値ではない、外から(あるいは内側から?)天上の神々が見て、定めた数値。
お前はそれぐらいの力量があるよ、だから信じなさい、当たってるから。
そんな天におわす御主からの評価だということは、子供だって知っているし。
だから。
CLASS・Ⅰ:
・Ⅱ:
・Ⅲ:
これは正しいのだ。
「いや」
正しい。
「いやいやいやいやいやいやいや」
無理だって。
これおかしいって。
絶対間違えてるって。
99ってなんだよ、皆伝何周分だよ、ほぼ10回やって十回も皆伝もらってるじゃん。黒帯コレクションじゃねえんだぞ。
一つのクラス極めるどころか10回ぐらいカンストしてんじゃねえか。
「え、なにこれ、こわい……いや、Ⅹ超えた奴がいないってわけじゃないけどさ」
有名な戦士でならちらほらクラスの
でもそれって大体何代も剣を振るってる家の
「うん、おかしいって」
もしかしてなんか呪いとか病気とかそういうのか?
記憶が朧な寝ている間に不信心なことをしたとか、変なものを食ったとかそういう。
え、なにしちゃったの。
なんかしたの? え。
「……す、
恐怖としか言いようがない吐き気をこらえながら、ステータス画面を操作する。
<ファイター>からの高みを上げるには年齢的成長や筋トレなどの肉体強化もそうだが、なによりも戦いの技を習熟する必要がある。
だからその熟練度をチェックすれば。
┝斬る 熟練度:999999999%&$3_*`
┝払う 熟練度:899999999’5&’%~##
┝けさ斬り 熟練度:9899999&$&94%$
┝――――――――――――――――――――――
┝――――――――――――――――――――――
・
・
・
「いぃぃやぁぁぁぁぁぁ……!!」
翔騎は恐怖した。
幼子のような声を漏らすしかなかった。
腰が抜けたままズリズリと後ろに下がる、それにつられてステータス画面も下がる、それに怯えて更に下がる、画面も追ってくる。
ひぃいいという情けない声と共に部屋中を後ずさりで一周する奇怪な生物が生まれてしまった。
「はぁ、はぁ、はぁー……なんだこれ」
5分後、最終的にひっひっふーと恐怖を生み出すような呼吸をしながら翔騎は落ち着いた。
目の前の恐怖を直視しないと前に進めなかったともいう。
「これ絶対おかしいよな」
クラスごとに想定されている技術、行動の総称だ。
例えば格闘家なら正拳突き、三日月蹴り、受け身。弓使いなら遠弓、曲射、狙撃などの動作。
素人でも出来る動作に対して、一定以上の技量、合理性を持った動作名をスキルと呼び、登録されている。
神示評価と同じく神が評価したものに名前が与えられるのだ。
それには名前が与えられるべきだという価値。
そんなスキルには熟練度がある。
これらの動作をどれだけ意図的にかつ任意で行っているかという実績証明である。
これは寝ぼけながらとか、適当に素振りじゃなくて、しっかり使わないとカウントされないものなのだが。
「ひの、ふの、やの……見える数字だけで10桁ぐらいあるよな? 文字化けしてて多少ずれてるかもしれんが」
一日の秒数って何秒だっけ?
タブレットの電卓機能で計算してみる。
「えと、一日が24時間で、1時間で60分で、1分が60秒だろ……? つまり24×60×60?」
計算してみたら、86400と出た。
……8万6千400秒?
え、これだけやって5桁?
「1年間の秒数は、と」
タブレットでクークルしてみた。
31536000と出てきた。
「3153万6000秒……これだけやって8桁?」
不眠不休で1年間毎秒素振りしていても達成できない数字です。
しかも熟練度の仕様的に素振りじゃなくて、最低でも木人とか、壁とかきちんと打ち込む必要があるわけで。
「あっはっは」
さらになんか文字化けしてるところに数字が見えてるからさらに伸びているとか。
「あっはっは……」
パンとステータス画面を閉じた。
パタンとタブレットのカバーを閉じた。
口を開けてたペットボトルのお茶を飲みきった。
寝間着から制服に着替えた。
いつの間にか登校時間だ。
学校にいこう。
「ねーわ」
多分間違いなくきっとなんかバグか病気かなんだ。
ベッドの処理も、ステータス画面の表示の狂いもなんとかなるさ。後で考えよう。
理解できないものから目を背けて、翔騎は外出した。
だから彼は気付かなかった。
ガラリと歪んでいたベッドが、歪みに耐えきれずに崩れたことを。
その隙間からこぼれた紙切れに。
ペラペラのシーツに巻き込まれていた一枚のメモ用紙。
その文面を。
最強になれるスイッチです
押しますか? 押しませんか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます