女騎士ちゃんの…日常物語!
ベガさん
第1話
「フライドポテトと女騎士ちゃん」
「……これが、“揚げた芋”ですか……」
エリス=フォン=グラディアは、
目の前の細長い金色の食べ物を
じっと見つめていた。
鋼の鎧をきちんと着込み、
腰には王国騎士団の紋章入りの剣。
だが今、彼女が立っているのは戦場ではなく――
「屋台通り……ですね、ここは」
「そうだよエリス先輩。たまには仕事の帰りに寄ってみるのもいいでしょ?」
見習い騎士のリュカが、
手慣れた様子で袋の中から
一本つまんで口に放り込む。
エリスはぎこちなく、
それを真似してフライドポテトを一本つまみ、
恐る恐るかじった。
「……っ!? こ、これは……!!」
一瞬で目が見開かれる。
騎士団でも見せたことがないほどの驚きの表情。
「外は香ばしく、中は柔らか……塩の絶妙な加減……!素材の持ち味を活かしながらも、油の力でここまで引き出すとは……!」
「いや、そんなに感動しなくても……」
「まさか……料理とは、ここまで進化していたのですね……!我が剣術と同等の――いや、
ある意味それ以上の衝撃……!」
「そんなに言われるとフライドポテトが高尚な食べ物に思えてくるなぁ……」
屋台の店主が苦笑する中、
エリスは袋を両手で大切そうに抱え込む。
もはやそれは、宝物を守るかのような構えだ。
「リュカ、感謝します。これは戦場では得られぬ……新たな発見でした」
「いや、俺はただ腹が減ったからポテト買っただけなんだけど……」
「……この世界には、まだまだ知らぬ戦場があるのですね」
エリスの目がきらめいた。
それは剣ではなく、油と芋の戦場――
今日もまた、女騎士ちゃんの日常が
一歩広がったのだった。
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