第9話 気まずい

映画館を出た後はとにかく気まずく会話が出来なかった。流石に玲央のファーストキスがあれはないよね...

あまりにも強引で全然ロマンチックじゃない。チラリと玲央を見下ろす 無表情のまま真っ直ぐ前を向いて歩いている。洋服を買いに行くことは分かっているのでこれ以上の会話が不要だったことは理解していた。


「...もしかして怒ってる?」

「怒ってない」

「ほんとに?」

「うん。ただちょっと...悔しかった」

悔しかった?どういう意味だろう

すると玲央は身を寄せてきて聞こえないくらいの小さな声でかっこよかったな。と呟いた

まったく、聞こえないふりというのは便利である。

「洋服買う前にお昼食べる?」

「そうしよっか」

「私はイタリアンがいいなぁ」

「それならピザかな...」

映画館に行く時よりも圧倒的少ない会話数で私たちは某イタリア料理店に着いた。

「店員さーん」

「はい!ご注文はいかがですか?」

「私はカルボナーラで玲央はマルゲリータでいい?」

「うん。大丈夫」

「カルボナーラとマルゲリータでよろしいでしょうか?」

「はい お願いしまーす」


無事に注文を終え向かいにいる玲央の顔を見る。

さっき見下ろした時も思ったがなんだかずっと頬が赤い。大丈夫だろうか

「玲央熱とかある?顔赤いよ?」

「へ!?大丈夫だよ!大丈夫だから...」

「ほんとに?無理しないでね」

俯き運ばれた水をずっと飲んでいる。

これは...嫌われてしまっているかもしれない...

原因なんて一つだ。早く謝るなりなんなりしないと...

「お待たせしましたーカルボナーラとマルゲリータです。」

「ありがとうございます。」

「玲央 食べよ?」

「うん」

「「いただきます」」


「玲央は何系の服が欲しいの?」

「スポーティなのがいいな」

「スポーツしないのに?」

「動きやすいの!ダボッとしてる方が好きなんだよ」

「なるほどねぇ...」

頭の中の着せ替え人形(玲央)で想像してみる。

正直、素材が良いのでなんでも似合う気がしてきて考えるのが馬鹿らしくなってきた。

「玲央ならなんでも似合うよ。絶対」

「そりゃどーも」

適当に選んだ店だったが中々美味しい。これはリピート確定かな〜

「...美味しそうに食べるね」

「なに?食べたいの?」

「食べたい」

「そうがっつくなって〜 はい あーん」

「え!?それは...恥ずかしくない?」

「私は別に?」

「あっ...そ」

玲央はしばらく考えた後目を瞑って口を開いた。

麺を巻いたフォークをゆっくりと口の中へと運んでゆく...なんだか...いけないことをしているような気分になる。

「ん...美味しい。」


やっぱり美少女が微笑む姿というのは映えるものだ。

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