TS後の百合は成立しますか?

ものめさめ!

第1話 自覚

私には同い歳の彼氏がいる。彼は運動は出来ないけれど頭はまあまあ良く顔はこの上ないほど整っていてオマケで挙げていいわけないぐらい性格が良い。


そんな完璧超人1歩手前なところは愛嬌があり間違いなくクラスの中心人物だった。


今日は委員会の仕事で朝早くから学校に来ていた。

彼は私と同じ委員会に所属しているので普段なら憂鬱な早めな登校でも今日の私の胸は高鳴っていた。

ガラガラと扉を開けて教室を見回しても誰もいない。

(まあ10分前だし...)

彼は時間をきちんと守るタイプでいつも5分前か10分前には集合場所についているのである。

(もうすぐ来るかな?)

そんなことを考えながら準備をしていると階段からコツコツと足音が聞こえてきた。その音は着実に教室へと近づいていき扉を開け姿を見せた。

「おはよう こなつ。」

「おは...よう」

言葉が上手く出なかった。そこに居たのは私の彼氏である玲央の姿ではなく全く見た事のない男子用制服を着た少女だった。いや美少女と形容した方が正確である。それほどまでに整った顔立ちだった。その美少女は一切迷いを持たず玲央の席に座っ...いや待て

「あの〜どなたか存じ上げないですけれどもクラスを間違えおられるのでは?」

「何その口調?僕ここのクラスだけど...」

......ボクっ娘!!

「いや...えとー...名前!そうだ名前教えてよ!」

「こなつ...嘘でしょ?僕のこと忘れたの?」

彼女は悲しそうなというより最早呆れた表情をしていた。

「え〜...うんもちろん覚えてるよ!あれでしょ?あの〜2組の〜...」

「だから僕は1組だって」

ボクっ娘...!!

「はぁ...ほんとに大丈夫?...僕は船木玲央だよ?」

船木玲央 その名前を頭のなかで反芻する。それは確かに彼の名前だった。

となれば残る可能性は...いや2次元じゃあるまいし

言われてみれば彼に顔立ちが似ている気がする...いやそれも多分気のせいだし...

でも本当にもし彼女が玲央ならこの質問に答えられるはずだ

「まぁ今までのは冗談で...それより問題!」

「ん。どうぞ」

「私の1番好きなアニメは何でしょう?」

「双子姫君と勇者VR 〜転生TS男子の百合の異世界チート令嬢ハーレム〜でしょ?」


ほっ...本物だぁーー!


こんなバチくそ長いタイトル ノータイムで言えるのは怜央しか居ない!ここまで来たらもう導き出されるのはひとつしかない...


船木玲央はTSした!


「ところで玲央。朝鏡見たりした?」

「いやしてないけど。どうして?」

「いや〜...寝癖がついてるから。珍しいな〜って」

「えっマジ?ちょっとトイレ行ってくるわ」

彼女になってしまった彼は小走りで教室を出ていった

我ながら中々の演技力である。主演女優賞も夢では無い

「あああああアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

明らかに演技ではない声がトイレから聞こえてくる。

恐らくTSしたことに気づいたのだろう 叫ぶのも無理は無い

しばらくして扉が開く。すると俯いたまま彼女が入ってきた。いきなり性別が変わるなんて重大な事件 ショックじゃない方がおかしい。私はゆっくりと近づいた

「玲央?大丈夫...?」

すると彼女は顔を上げて緩みきった口許を見せてきた

「...なんか嬉しそうだね」

「TSして嬉しくない男子なんていないよ〜!僕今超ハッピー!世界って素晴らしい〜!」

小さくなった体でクルクルと回り始める。

まぁ楽しそうならいっか と心の中で呟いた

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