藤の花とミツバチ

すばる

藤の花とミツバチ

緑が明るく輝く季節になり、藤の花のつぼみが目を覚ましました。

「おはよう!」

元気よくいうと周りの仲間たちは


「おや、お寝坊さんだね」

「もう種になっている子たちもいるのにね」


と笑いました。

見るとみんなは長くて美しい房をつけ、透明な風にふわふわと揺れています。


小さなつぼみは


「ぼく…みんなよりちいさな身体だ…」


と悲しくなりました。


隣ではミツバチが花の中にもぐりこんでいました。


「ねえ、ミツバチさん。ぼく、大きくなれるかな?」


ミツバチは


「どうだろね?」


と曖昧に答えながら花の中から出てきました。


つぼみがしょんぼりしていたので


「きみが大きくなったら蜜をもらいにくるよ」


と言うと、小さなつぼみは


「うん!きっときてね!ぼく大きくなるからね!」


と明るい声で言いました。


やがて多くの藤は豊かな種に変わり、みんな静かに過ごしていました。

緑が深く染まっていく中で 小さなつぼみはどの房よりも長くふっくらとした花に成長していました。


「ミツバチさん!ぼく、こんなに大きくなれたよ!」


「おかげでぼくも蜜を運べるよ。もうキミしか花をつけてなくてたすかるよ」


「そうなの?ぼく、きみの役に立ててうれしいな!」


そして藤の花はふわっと揺れて朝露を散らせ、ミツバチは驚いて花の房にもぐりこみました。


楽しそうにくすくすと笑う2人の笑い声と一緒に、あまい藤の花の香りがひろがるのでした。

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