第14話ー夏服
【夏服の官能劇】
美香は無言でジャージのファスナーに指をかけた。
美術準備室の窓から差し込む午後の陽射しが、額に滲む汗をやわらかく照らしている。
ファスナーが静かに音を立て、肩をすくめるようにして脱いだ上着から、熱のこもった空気がふわりと立ち上った。
白い夏服のシャツの襟元から、体温がゆっくりと外の空気にとけていく。
上着を脱いだ美香の夏服の体操着の白い半袖シャツは、彼女の胸の輪郭を容赦なく浮かび上がらせた。
午後の斜光が硝子を溶かすように準備室に流れ込み、シャツの薄い生地を通して、彼女の乳房の下縁に鋭い陰影のラインを刻んでいた。
彼女は上履きを脱ぎ、ジャージのパンツのウエストバンドの内側に指を滑り込ませ、臀部にぴったりと張りついた伸縮性のある生地をゆっくりと押し広げながら、慎重に下ろしていく。
汗ばんだ肌が少しずつ解き放たれ、冷たさと温もりが交錯するその瞬間に、彼女の息づかいが静かに揺れた。
ふくらみのある臀部がブルマの薄い生地に包まれたまま浮かび上がり、太腿のなめらかな曲線が陽光を弾いた。
ジャージを脱いだ瞬間、張り詰めた肌とブルマのコントラストが空中に白い楔を打ち込んだようだ。
鼠径部から隆起する恥骨の輪郭が、白い半袖シャツの裾の下から、呼吸するたびにその陰影を変えていた。
ブルマのゴムが食い込んだ辺りから、新雪のような肌がくっきりと浮かび上がり、まるで暗闇に浮かんだ蒼い星座のように、動くたびに腿の内側の柔らかな膨らみが、光の粒子を弾き飛ばすように揺れた。
ふと彼女が膝をすぼめた時、腿の付け根のしわが紡いだ闇が、逆三角形の頂点をさらに鋭くしていく。
まるで午後の密室で、白亜の彫刻が突然息を吹き返したかのような生々しさだった。
【解剖者のまなざし】
諏訪男はその様子をじっと見つめ、爬虫類のような冷たい目で、まるでメスで切り開くかのように、美香の肢体を執拗にイメージの中で解剖していた。
諏訪男はすでに彼女の輪郭、骨格、癖、呼吸の仕方さえも観察し尽くしていたようだった。
彼の視線は夏用体操着の食い込んだ縁を這い、布地と肌の境界線で蠢く汗の粒を数え、半袖シャツの下で揺れる乳房の重みを計測していた。
大腿部の内側に浮かぶ静脈の青さ、肩甲骨が羽ばたくように動く時の背中の襞、鎖骨の窪みに溜まる汗の軌跡。倒錯者の欲望の視線は、体操着の下の彼女の裸身を透視するX線のようだった。
「……では、はじめよう。」
準備室の窓ガラスに、二人の姿が歪んで映る。
まるでルネサンスの工房で師匠が弟子を指導する図のようであり、同時に、何か禁忌を犯す前の静かな瞬間のようでもあった。
「……では、このポーズを……両手を背中へまわせ」
諏訪男は一枚の写真を取り出した。《とらわれのアクション》──女体がねじれ、腕を背に回し、どこか諦めたような表情で立ち尽くす裸婦像。
それは、抗わぬ者の象徴のようだった。
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