第一部:空を刻む石 第五章:震える石板、沈黙の星
《パルカ・ウィリャイ》――「語りの沈黙」と呼ばれるその地下神殿は、代々の記録者たちの最終の書き所であり、語られぬ記憶を封じる場所だった。
アマルの手には、砕けた記録板のかけらと、自身で彫り上げた星図があった。そこには、夢の空も、観測の歪みも、空の裂け目も――すべてが重ねられていた。
「これは、記録ではない。ただの記憶だ」
アマルはそう呟きながら、最後の文字を刻んだ。星々の位置、空の変異、そして語り得ぬ光の裂け目。
彼の彫った線は、まるで風の揺れを石に封じるかのようだった。
石板を封じる儀式が始まった。神殿の奥、地熱でわずかに温められた封蔵室に、黒衣の神官たちが一枚の石扉を押し開ける。
その中に、アマルの石板が収められた。
封印文はこう記された。
> 「開かれるは、太陽が二度昇る日」
アマルはその場に膝をつき、声を低くして言った。
「記憶は語られぬ限り、死に絶える。語る者を、私は待つ」
言葉は誰に向けられたものでもなかった。
それは、まだ生まれていない誰かに向けた“呼びかけ”であり、願いだった。
扉が閉じられ、封印の刻が打たれたとき、アマルは空を仰いだ。
空は晴れていた。だが星はまだ見えない。
それでも星は、そこにいた。
彼の知らぬ誰かが、それを見上げ、語りを再び始めるまで。
夜が訪れ、空が闇に染まる。
星々は何も言わず、ただ瞬いていた。
だがアマルは知っていた。
星は、静かに“聞いている”。
(第一部・完)
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