忘れない。

存在しない空

6年通った見慣れた小学校

体育館へと繋がる鉄製の重い扉

隅の肋木

ただひっそりと佇む少年(悪い人では無い)(害を感じない)

体育の授業はバスケかドッヂボールのみ

窓の外は枯山水のような箱庭の風景

体育館の裏口から出ると廃車工場

交通事故で亡くなった父の車がある

フロント部分はべっちょり潰れている

ロックは開けっ放しで鍵はどこにも無い

後部座席と助手席の背もたれを倒した間にぼくは靴を隠している

これは2足ある

父に買ってもらった少し良いやつ

これを眺めるのが好き

どっちも宝物

授業が始まるチャイムが鳴ると同時にこの靴をまた間に隠す

誰かに見つかるかもという心配が常にあって不安


体は比較的軽く動きやすい日が多い

学校の階段を飛んで降りたり誰も追いつけないくらい早く走ったりできる

そして保健室の先生に怒られたりする

先生はいつもケーキを食べている

でも注意したほうがいい


〖ここで目が覚める〗


反動が来たかのように動けなくなる時がある

地面に付けられた白線だけが先に進んでいくように視界が歪んでスタートラインを間違えたかのように後ろにいる時がある

こうなると今度はぼくが追いつけない

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