紫電【343-A-15】から国民の皆様にお願いです。
こだいじん
第1話 あの夏の思い出
1942年6月6日。
ミッドウェー海上。
「爆弾!4機当たりました!!格納庫内の魚雷に発火!飛龍はこれ以上持ちません!!」
この言葉を聞いて、【飛龍】さんをよく知るおじさんは。
「一生懸命努力したけれども、この通り本艦もやられてしまった。力尽きて陛下の艦をここに沈めなければならなくなったことはきわめて残念である。どうかみんなで仇を討ってくれ。ここでお別れする」
って言って、船内帽だけ置いて『消えてしまった』。
それから2年後。1944年。
「…ってアイツ言ってた。凄い聞いてびっくりしたけど…ほんとかなあ?神隠しみたいだって…」
僕は【紫電/343-A-15だよ】。
一言で言うとデストロイヤー愛用機だね。
日本を「アイツ」と、お守りするんだ!!
でもさ!聞いてよ!アイツね、変なの!いったいの、いっつも!僕ね!声出してるよ?!飛んでる時!
「あのさあ!乗り方なんか、もう違うから!激しいから!翼引っ掛けて後ろからぶつかるとか、アクロバット飛……痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!ガンガン蹴らないでよ!!あのね!ラジオじゃないんだよ?!」
「撃墜完了ー。いタタター…なんかさあ。僕だけ、物理的損傷が激しいって言われてるよ!?ちょっと!?ねぇ聞いてる!?ぎゃああああああああああああ!排気口近く蹴るなあああああ!整備中でしょうがあああああああああああ!!この人でなしぃ!いつか『お前』なんか!『〇村屋さん』が、作りそうな小豆のかっったい、うーーーんとかっったい、『小豆固めただけ』の
「コイツ」はムカつく事に、婚約寸前の女の子がいたのに、婚約破棄した……らしいんだ。
いつ死ぬか分からない「男」を待たせるのは悪いだろ!って!
「そんなことないよ!僕とアンタで『B-29』なんか、沢山蹴散らして……ちょちょちょちょいきなり急降下して何を…」
「アイツ」と、ずっとお喋りしてて、気づいてなかった。
……ー熱いよう、熱いよう。お母さーん、お父さーん、痛いよう。
って沢山の人があちこちで泣いてたから。ー
だから、アイツと「僕」とで、
「アイツ」の部下さんが先に散った時。
「アイツ」は、一言も言わなかった。
そのわりに一緒に蹴散らした悪者が、とても多かったよ!
1945年8月1日。
僕はその日、これまでの戦績が無茶したのか。
アイツとこれまで頑張りすぎたのか。
機体に大きな故障が見つかって。
【紫電/343-A-01 】に代わりを頼んだんだ。
そしたら、『アイツ』をまてど、暮らせど帰って来ない……。
「あ、堀さんだ!僕メンテナンス終わっ…」
堀さん。
ねえ、どうして。泣いてるの?
あの大バカは僕をおいて、お財布を置いてったの?
僕は、
「『ワレ、機銃筒内爆発ス。ワレ、菅野一番』」
アイツは、そう言って「『消えた』んだ」って。
堀さんが、僕の前で泣いてた………。
8月6日。
僕があれ以来飛ぶことなく、あの爆弾が広島に落とされた事を聞いた。
8月9日。
長崎に、今度は。
ねえ、どうして!!アイツどこ行ったの?!
8月15日終戦。
僕は多分、鉄屑にされちゃう。
僕がちゃんと機体整備してたら、8月16日からも生きてるアイツに会えたの?
日本国民の皆様へ。
【お財布】の落し物が上がっています。
お心当たりがある方は、「〇国神社」の受付までお越しください。
期限は無期限でございます。
【紫電】343-A-15のお連れ様。
お連れ様が、【広島県呉市内にて】お待ちです。
お財布をお持ちの上、呉市に着き次第。
【館内外であろうがなかろうがアクロバット飛行せず、静かに】お願いいたします。
続きまして、【お帽子】の落とし物が上がっております。
後輩にお帽子を預けられました【飛龍】
搭乗員のお客様は、いらっしゃらないでしょうか?
【海軍】第一種略帽、艦内帽だと判明したので、【広島県江田島市内】がお預かりしております。
【海上自衛隊第1術科学校】校内。
『教育参考館の六号室』に【展示】されております。
お心当たりがある方は、「広島県海上自衛隊」の受付までお越しください。
僕は【紫電】型は343-A-15。
アレから【レプリカモデル】になり、展示されてるよ。
今は、「広島県」の【陸地】で『アイツ』と「おじさん」の帰りを待ち続けてます。
「……『住所等要確認録』ばっかり溜まっていくなあ『お財布』と『お帽子』。【誇り】まみれになるよ?大丈夫かなあ?【どこの国】を、ほっつき歩いてんのかなあ。腹ぺこだあ!なんか食わせろやあ!この野郎!!って…異国の地の偉い人とかを、ぶん殴ってないかなあ……心配だなあ…」
紫電はそう言って、館内を見渡したましたが、『顔見知りはもう、だあれも』居ませんでした。
紫電【343-A-15】から国民の皆様にお願いです。 こだいじん @yachiru-regurusu
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