第22話 生の渇望
「お前はこの状況を決して望んではいない」
「そんな事ありません、これが私の望みです」
「ではなぜ震える」
「こ、これは喜びをかみしめているのです、体が震えるほどこの状況を待ち望んでい
たのです」
「本気でそう思っているのか?」
「も、勿論です」
「見ず知らずの男にその命をささげるのか?」
「はい」
「そうか、なら・・・・・・」
俺は手にわずかばかりの力をこめると、ホロは瞬時に体がこわばった。
そして、わずかに苦しそうな声を上げると、俺の手を強く握りしめてきた。そして、まるで抗うかのように体をバタバタと動かし始めた。
その様子に俺はすかさず手を離すと、ホロはせき込み、息を乱しながら笑っていた。
「あ、あははっ、あはははっ、ど、どうしてやめるのですか?」
「・・・・・・確かに分かった」
「な、なにがですか?」
「お前から感じるのは、強い生への執着と、取り戻したい栄光だ」
俺は、そんな言葉を口にしながらホロの額にくぎ付けになっていた。
なぜなら、彼女の額からはとてつもない強い光とエネルギーが満ち溢れていたからであり、彼女の乱れた髪から覗く額は、まるで玉のように美しく、口づけしたくなるほど魅力的なものだった。
こんな環境に置かれてもなお輝くその額、それは紛れもなく彼女の心の奥に秘めた強い意志の表れであり、彼女が本当に望むものが別にあるという証に思えた。
「え?」
「お前はこの状況を望んでいない、この状況は周囲の抑圧によって生まれた薄っぺらいものだ」
俺の言葉にホロは何も言わずにその場で力なく座り込んだ。その様子に俺は少しやりすぎたのかもしれないと思っていると、彼女は俺を探すかのように顔を上げた。
「では、私はどうすればよいのですか?」
「簡単だ、このまま牢獄で死を待つか、それを打開するための力を手に入れるかのどちらかだ」
「力?」
「そうだ、どっちがいい?」
「そ、そんなの、力が欲しいに決まってるじゃないですか」
ホロはあっさりと素直な言葉を口にした。最初からこの言葉を聞かせてくれればよかったのだろうが、そうしなかったのには彼女なりの葛藤があったのかもしれない。
「なら決まりだな」
「き、決まりというのは」
「お前のその望み俺が叶えよう。ただし、その代わりに人を辞めてもらうことになるがな」
「人を辞める?」
「そうだ、お前は俺に手によって新たな存在に生まれ変わる、その時お前はもうただの人ではない」
「この地獄を抜け出せるのであれば、私は何にでもなります」
「いいだろう、それで執行日はいつになる予定だ?」
「四日後と聞いております」
「四日か馴染むことを考えるなら一秒でも早く調達しないと間に合わないか・・・・・・よし、じゃあまた会おう」
「あっ、お待ちくださいっ」
「ん、なんだ?」
「あなたのお名前は?」
「ジュジュだ」
「ジュジュ様・・・・・・今日あったばかりですが、私にはあなたを信用するほかにありません。どうか、どうか、よろしくお願いいたします」
ホロはそう言いながら頭を下げた、それは地面についてしまうほど深いものであり、俺はすぐさまやめるように言った。
「おいやめろっ」
「え、ですが、私の様なものにはこのくらいの事しかできませんので」
「ですがも何もない、お前のきれいな額に傷がついたらどうするんだっ」
「・・・・・・え、額?」
「いいからおとなしく待ってろっ、すぐに戻るっ」
俺はすぐさま地獄房を抜けて、ホロにふさわしい力と魂をすぐに探しに行くことにした。
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