第33話-覚醒の光、バリキーとの大いなる衝突-


佐藤花梨の視点


偉大なる者バリキーの眷属――その黒き炎を受け止める、私の純なる光の防壁。

その圧力は凄まじく、両手に握る新型グローブを通じて、絶え間ない重圧がのしかかる。

核から流れ込む清らかなエネルギーを最大限に活用しても、辛うじて拮抗しているだけだった。


『……光の導き手よ……偉大なる者バリキーの力の前に、汝は無力……闇こそがこの世界の真なる姿なのだ……』


眷属の身体を通して響く、偉大なる者バリキーの意志のテレパシー。

そこには絶対的な冷徹と、揺るぎなき支配への信念が込められていた。

すべてを覆い尽くす闇こそが、この世界の本質であると信じる強固な思想。それが、私の心に深く突き刺さってくる。


「そんな理屈、私は絶対に認めない!」


私は叫ぶ。心の奥底から溢れ出す光とともに、全身を貫く怒りを放つ。


その声に応えるように、核の純なる光がより強く輝いた。

私の内に宿る温かな力もまた、はっきりとした形で増幅され、グローブから放たれる光がさらに力を得る。


光の防壁は一層強さを増し、眷属の黒き炎を少しずつ押し返し始めた。

光と闇がぶつかり合い、空間そのものが歪む。

巨大なエネルギーの奔流が周囲に放たれ、風と衝撃が世界を揺るがす。


「今です! 光を一点に集中させて、あの眷属を打ち破りなさい!」


白石先生の声が、冷静かつ力強く響いた。

私は意識を極限まで集中させ、核のエネルギーをグローブの一点へと集束する。


まばゆいほどの光が拳に宿る。白を超え、黄金に近い輝き。

それはまさに希望そのもののように、私の掌に形を持って現れた。


偉大なる者バリキーの眷属よ! これが光の意志だ!」


私はその光を解き放つ。

拳から放たれた光は、黒き炎を焼き払い、眷属の漆黒の鎧を粉砕する。

爆発が起き、暗黒に満ちていた空間が、一瞬だけ純粋な光で包まれた。


眷属の身体が吹き飛び、赤い瞳の輝きが明らかに弱まる。

そしてその隙間から再び伝わってくる、偉大なる者バリキーの意志――

それは、怒りに満ちた震えるような声だった。


『……光の導き手よ……その力……許さぬ……滅びの時が、いずれ汝らを呑み込むだろう……』


私は、彼の威圧に屈することなく、まっすぐに心の中で答えた。


「私たちは、どんなに強大な闇にも屈しない。あなたの野望を打ち砕くまで、私は立ち続ける!」


その叫びに再び核が応える。

内なる光はより強く燃え上がり、私の身体全体に拡がっていく。

それは単なる力ではない。希望、意志、そして未来への信念――そのすべてだった。


眷属の鎧に刻まれた亀裂へ、私は渾身の一撃を叩き込む。

拳から放たれる清らかなエネルギーは、着実に闇を貫いていった。


眷属も最後の力を振り絞って、四方に黒き炎を放つ。

しかし、白石先生の結界がそれを押さえ込み、健太の結晶が衝撃を和らげ、美咲の胞子が動きを封じる。

私たちの連携が、闇の暴走を食い止めていた。


そして、最後の一撃。

私は眷属の存在そのものを、光で包み、静かに消滅させた。


耳に届く、金属が砕ける音。眷属が放っていた異質な気配は、完全に消え去っていた。

偉大なる者バリキーのテレパシーも、今はもう、どこにも届かない。


「……終わった、の?」


私は息をつき、周囲を見渡す。

崩れた空間の隙間から、穏やかな光が差し込んでいた。


だが、それはあくまでも一時の安堵に過ぎない。

偉大なる者バリキーの本体は、まだどこかでその意志を保ち続けている。

今の勝利も、きっと彼にとっては“想定のうち”なのだろう。


私たちの戦いは、ようやく始まったばかり。


核は以前よりも透明に輝き、失われた希望を取り戻したかのように光っている。

あの悪魔が残してくれた、温かな信頼――それもまた、私たちを導いてくれる力だ。


私は、光の導き手としての自分をもう一度見つめ直す。

逃げることはできない。

次に待つのは、きっと、真なる偉大なる者バリキーとの対峙。


そのときこそ、全てを賭ける時。


仲間とともに、光を掲げて、闇に挑む。


その戦いは、ここから始まる――。

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