第42話 集結×ダンジョンの口
迅が目を覚ますと、そこは見慣れた“夢の世界”だった。
「……やっと来たか」
心の奥で待ち望んでいた感覚に、胸が高鳴る。
(ミカは本当に来てくれるのだろうか……)
不安が頭をよぎったが、考えるより先に仲間を探すべきだと決め、迅は村の通りを歩き出した。
すると、すぐに懐かしい背中が目に入る。
「ハク!」
「おう、迅!」
振り返ったハクの顔には、修行を終えた自信がにじんでいた。
「やっと修行終わったんだな!」
「ああ。これで肩を並べて戦える」
迅は頷き、胸の奥で熱いものを感じた。
「これからダンジョンに行こう。……ああ、ミカも修行を終えたみたいだ。もうすぐ来てくれるはずだ。少し待とう」
そう言うと、迅は腰に提げていた一本の刀を取り出す。
「ハク、これをやるよ」
「……刀?」
「ガオウの弟子の剣を返したとき、代わりにガオウがこれを渡してくれた。『漆黒の刀』だ」
受け取った瞬間、ハクの表情が一変する。
「……っ、すごい……まるで闇に吸い込まれそうだ」
刀を握るだけで、空気が一段と重くなる。
「不思議な感覚だ……!」
ハクの瞳が鋭く光り、その瞬間、彼の中に新たな技の気配が芽生えた。
《心得スキル獲得:真柳生流》
「……柳生流……。二刀流を操る者たちの伝承は聞いたことがあるが……まさか、本当に……」
謎は深まるばかりだった。
その時――空から甲高い鳴き声が響き渡った。
「クゥアァァ!」
見上げれば、夕陽を背に舞う巨大な影。ワシの羽ばたきが風を巻き起こし、地上の二人を包み込んでいく。
「ミカ……!」
待ち望んでいた仲間の姿が、ようやく揃おうとしていた
ワシが地に舞い降りると、その姿は淡い光に包まれ――やがてミカへと変わった。
「すご!」
「おいおい……」
迅とハクが声を合わせ、同時に息を呑む。
「やっと会えたね」
ミカが微笑む。修行を経て纏う気配は、以前の彼女とはまるで違っていた。
その瞬間、近くで見ていた村長が驚きに目を見開き、足をもつれさせながら駆け寄ってくる。
「き、君は……まさか魔法使いなのか? 噂には聞いたことがある……だが、実在したとは!」
ざわめきが村中に広がり、人々の視線がミカへと集中する。
ミカは頬を赤く染め、少しだけ照れくさそうに俯いた。
「そ、そんな大げさな……。さぁ、行こう。ここで立ち止まっている時間はないよ」
彼女の言葉に促され、迅とハクは頷く。
「こっちだ。ダンジョンはこの先だ」
迅が前を指し示し、三人は並んで歩き出した。
やがて――夕闇が迫る森を抜けた先に、それは口を開けていた。
黒々とした洞窟の入口。
中から吹き出す冷たい風は、生き物の吐息のようで、背筋に悪寒を走らせる。
「……ここが、ダンジョンか」
ハクが低く呟き、漆黒の刀に無意識に手を伸ばす。
「待たせたな。今度こそ、本番だ」
迅は静かに目を閉じ、覚悟を決めるように深く息を吸い込んだ。
ミカは胸元で指を組み、魔力を巡らせながら一歩前へ。
「絶対に、みんなで帰ってこよう」
三人の影が重なり、闇の口へと吸い込まれていく。
――運命を賭けた冒険が、今まさに始まろうとしていた。
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