第14話 王の眼差し

(クエストをクリアしたら……何が起こるんだ?)


安堵と同時に、次なる不安が静かに胸に芽生える。

そのまま、迅は目を閉じた。


 


――そして、場面は変わる。


場所は、王国。

豪奢な玉座の間に響く急報が、空気を一気に緊迫させた。


「王様っ! 村を襲撃していた部隊が戻り、襲撃失敗、兵士長が討たれたとの報告です!」


「……なんだと?」


王の顔に怒りと驚愕が走る。

重々しく座るその姿が、徐々に立ち上がるほどの衝撃。


「ただの村に、我が兵が壊滅させられただと? 兵士長までも……? 何が起こった……」


「……わ、わかりません! ただ、他の2つの村は滅ぼせたようですが、3つ目の村にて、兵は壊滅。兵士長も……討たれたようです」


「わけがわからん……!」


王は玉座の横の柱を叩きつける。


「兵士長は我が軍でも屈指の武人だ。奴を討てるなど……ただの村人に出来る芸当ではない」


「新たな兵を送りますか?」


「いや――待て!」


王は静かに、しかし重く言葉を吐いた。


「今、無闇に兵を動かせば、他国の侵攻を招く。今は“戦う”よりも“得る”時だ……」


「は……?」


「その村を、我が兵に加えるのだ」


「仲間に……ですか?」


「そうだ。あの兵士長を討つほどの力を持った村……ならば、敵に回すより味方にした方が良い。兵力が不足している今、まさに“最強の一手”となろう」


「し、しかし……兵士長を殺した者を仲間にするなど――!」


「黙れッ!」


王の一喝が広間に響いた。


「村を襲撃したのは我らだ! 報復されて当然。それを逆恨みするな! 誠意を持って頭を下げろ……それが王国を生かす唯一の道だ!」


「……はっ。今すぐ、書状を用意いたします」


 


***


 


(――ん……)


迅はゆっくりと目を開けた。


そこは、いつもの村。

けれど、空気は少しだけ違って感じられた。


「迅! 起きたか!」


村人のひとりが駆け寄ってくる。


「王国から書状が届いた。お前に来てほしいってよ!」


「王国から……?」


(まさか、報復じゃないだろうな)


迅は念のため、弓と短剣を腰に差しながら村の集会所へ向かう。

そこには、開封された王国の書状が置かれていた。


 


> 《書状》


“我が兵を討った優秀なる村人へ


貴殿の武勇、誠に見事。

ゆえに、我が王国の一員として迎え入れたい。

条件や詳細は直接会って話したい。

王国へ来訪されたい”


王国代表 サルバトル王




 


「……まさか、招待されるとはな」


迅は眉をひそめながらも、直感していた。


(これも――クエストの続きだ)


王国へ行くことで、何かが分かるかもしれない。

夢の力、スキルの真相、この世界の謎――


それらの扉が、王都で待っている気がした。


「行くよ。……王国へ」


迅は静かに頷いた。

物語は、次のステージへと動き出す。

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