第3話 予感
さて――次は、あの火矢をどう防ぐか。
授業中、教科書を開きながらも、頭の中は異世界の村のことばかりだった。
遠くから放たれる火矢。どうにも手の打ちようがない。
弓兵の射程外まで敵が近づくのを待つか、それとも、村自体の耐火性能を上げるか……。
「おい、迅! 授業はちゃんと聞け!」
「す、すみません!」
先生に怒られ、クラス中がクスクスと笑いに包まれた。
それでも、俺の思考は止まらない。
「――湿った木は、火起こしに向いていません。原始人も、乾燥した木を使って火を起こしていたんですよ」
理科の教師の声が耳に飛び込んできた。
(……ん? それだ!)
ピンときた。
湿らせればいい。村を、燃えにくくしてしまえば――。
放課後、俺は一刻も早く家に帰ろうと、足早に校門へ向かっていた。
「迅! 一緒に帰ろ!」
背後から声をかけられる。
振り向くと、そこには花山ミカが立っていた。
ミカは、女子の平均くらいの身長で、柔らかそうな髪を肩口まで伸ばしている。
顔は、学年でも“上位3位以内”と噂されるほど可愛くて、成績も優秀。
さらに、スタイルも良く、まさに「デキる女の子」そのものだ。
小学校の頃からの腐れ縁で、何だかんだよく話す仲ではある。
「今日、授業中ぼーっとしてたね。なんかあった?」
「んー、最近ちょっと変な夢を見てさ。それがなんなのか、考えてたんだよ」
「夢? 迅が? なんか意外!」
ミカがくすっと笑う。
でも、その笑顔が消えたのは次の瞬間だった。
「……ん? 危ない!」
強烈な予感が、俺の背中を走った。
とっさにミカの腕を引き寄せ、抱きかかえるようにして歩道の外へ飛びのく。
――ブオンッ!
バイクが猛スピードで横を駆け抜け、水たまりのしぶきが宙を舞った。
「きゃっ! な、なに!?」
ミカが目を丸くし、少し顔を赤らめている。
「今、引かれそうだったんだ。ギリギリだったぞ」
「……うん。ありがとう。でも、もう離していいよ?」
「あ、わ、わるい……」
軽く照れながら体を離すと、ミカも気まずそうに笑った。
また“予感”が働いた。
あれは偶然じゃない。やはり俺の中で何かが変わっている。
その後は、いつも通りの世間話をしながら、ミカと並んで帰路についた。
* * *
そして夜――。
「昨日のようには、いかん」
布団に入った俺は、静かに目を閉じる。
昨日の失敗から学び、今夜は秘策を用意してきた。
「今度こそ、やってやる――!」
眠りに落ちていくその瞬間、俺の胸は希望と緊張で高鳴っていた。
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