現実に帰ってきたらスキル所持者でした ~異世界クエストは寝てクリア~

@mayoL5

第1話 夢と現実

「襲撃だー!!」


 村が襲われている。

 周囲の村人は次々に殺され、家々は炎に包まれ、やがて俺自身も命を落とす――


 そこで、必ず目が覚める。


 この夢を見るようになったのは、一週間ほど前からだ。

 毎晩、眠るたびに同じ夢。村が襲われ、自分が死ぬまでの光景を繰り返し見せられる。


 最初はただの悪夢かと思って、深くは気にしなかった。

 俺は普通の高校生。学校に行って、勉強して、友達と遊んで、家に帰る。

 そんな平凡な毎日を、今まで通りに過ごしていた。


 でも今夜、ふと思ったんだ。


 ――もし、あの夢の中で何か行動を起こしてみたら、どうなるんだろう?


 夢だとわかっていても、ただ死ぬのを待つのは、さすがにバカらしい。

 何か、できることはないのか――。


 眠りにつくと、やはり俺はあの村にいた。

 そして、まだ襲撃まで少し時間がある。よし、間に合う。


 奴らはいつも、正面の門から堂々とやって来る。

 だったら、その門の前に落とし穴を掘っておけば……。


 でも、一人じゃ時間が足りない。協力が必要だ。


「おーい! お前ら! 一緒に落とし穴作ろうぜ!」


 村の子供たちを集めて、「遊び」の一環だと騙す。ちょっと心が痛むけど、背に腹は代えられない。

 みんなで土を掘り返し、ようやく穴が完成した。


「よし、これなら大丈夫だろ!」


 深さ3メートル、縦横3メートル。立派な罠ができあがった。

 これで、少しはマシな抵抗ができるはずだ。


 さらに俺は、大人たちにも声をかけた。


「最近、あちこちの村が襲われてるって聞いた。この村も危ない。だから備えとして、罠を作ったんだ!」


 大人たちも、どこか不安を感じていたのだろう。

 俺の言葉に納得し、罠の設置を手伝ってくれた。


 そして夜――。


「襲撃だー!!」


 見張りの男が、村に警告の声を響かせる。



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