帰還装置と、転移する伝書鳩
@hoge1e3
第1話 本当にバカかと
「一緒に……いてほしい」
この男がそう言って、唇を近づけて来た時、私は思った。
この男は本当のバカなんじゃないかと。
―――――†―――――
「あとパラドワドさえそろえば、かんせえするよ」
「そうね、本当にありがとう」
「魔物の村」で、魔物たちによって着々と組み立てられている、≪帰還装置≫。
魔物といっても、彼らは善良な魔物。帰還装置について書かれた文献を探してくれて、力を合わせて組み立ててくれている。
これが出来上がれば、私は地球に帰れるはずだったのに。
「でも、呪胎が終わるまではまだかかるからさ」
「どれくらい?」
「きょお中……には、終わるかな
何よその微妙な間は。
「う、うん。ちょうどいいかな、おじいちゃんもおばあちゃんも来るのに少しかかるとか言ってたから」
私も微妙な間で返した。
「そうでも……ないみたいだぞ」突然この男が口を挟んできやがる。
この男の持っているトゴリーティス(※言葉の話せない魔物とか、遠くの人と文字で会話できるらしい。詳しくは知らない)に「mousugu tsuku」という文字が。おじいちゃんとおばあちゃんは意外と早く着くみたいだ。
そのとき、この男が飼っている青色のドラゴンが急にわめきだした。
「え? なんだ、またモラックの実食わせろって?」
相変わらずの食いしん坊だ。 この男はドラゴンにまたがり、パラウェリの木のほうに向かって、飛び立っていった。
「サーイさんも、おじいちゃん迎えに行ったら?」
「そうね」
魔物の一人にそういわれて、私もパラウェリの木のほうに向かって歩いた。
パラウェリの木。今いる地上と天空の”浮遊大陸"を繋いでいる巨大な木だ。
私のことをずっと世話してくれた、おじいちゃんとおばあちゃんは今、浮遊大陸のゾルゾーサという村で暮らしている。そこからこの村まで降りてきて、私のことを見送ってくれるという。
パラウェリの木の根本に着くと、この男がぽつねんと立っている。あのドラゴンはいない。
「バウザスのヤツ、モラックの実食べたらテンションあがって、じいさんとばあさんを迎えにいくとか行って昇って行った。3人も乗せるのはやだからって、俺をほっぽって行きやがった」
「あ、そう」
パラウェリの木の下、この男と2人きり。
もしドラゴンが連れてくるのなら、おじいちゃんとおばあちゃんはもうじき着くだろう。待つしかなかったんだ。
そういうわけで、冒頭のように、巻き込まれたのだ。
―――――†―――――
「できるわけ……ないじゃない
「わかっている……でも
それ以上、押し付けてくるな。
拒否する。
全力で、押し返してやる。
……私の……唇で……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます