動的/静的な物語論
@yamatsukaryu
はじめに
子供の頃から、物語が好きだった。
ワクワクするような冒険、知性を駆使し、狡猾な敵の策略を出し抜く快感、胸が張り裂けそうになる切ないストーリー、暗闇の中にただ一つ光る勇気、世界で一つだけの愛。
物語に没頭し、ため息と共に顔を上げると、そのどれもが現実にはなく、そして胸に残ったその気持ちだけがどこかへと繋がっていた。
その感覚は大人になったいまも変わらない。
だけど、あの時と決定的に変わっていることがある。
それは自分を取り巻く、物語を巡る環境だ。
かつて、私にとって物語を得る手段はテレビと漫画、映画、ゲーム、そして小説だった。
いまではそこにスマホと、インターネットがある。
そこでは無数の小さな物語が湧き上がる泡のように生まれては拡散し、またたく間に忘れ去られていた。
大人になった私は、自ら小説を書くようになった。
でも、小説も、小説を取り巻く環境も、小説を書くこと自体もあの時とは大きく違っていた。
物語は変わっていなくても、それを読む私たちは変貌していたのだ。
この動的/静的な物語のモデルについて考えたのは、なぜそれが起きたのかを、できるだけ正確に知りたかったからだ。
そしてそれを、いま、世の中でなにが起きているのか知りたい人、なにかを書きたい、それを誰かに読んでもらいたいという、甘美な夢と恐ろしい呪いに囚われた人に向けて問いかけてみたいと思ったのだ。
これは、霞のように移ろう物語を捉えようとする儚い営みである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます