第53話 タイマンボクシング

 私は喧嘩があまり好きではなかった


 小学校とか中学校の時って男子はやっぱり喧嘩して強くてなんぼ!みたいなところってあったかと思うけど、皆さんはどうですか?


 鈴木君と尾崎君の喧嘩があって、鈴木君も少し自信がついたのかオドオドすることが減り、結構ズケズケと私にも意見を言うようになってきた


 話は変わるけど、施設では大浴場があり、夕食の後は適当にお風呂に行った


 大体は、仲の良かった尾崎君や、田中君、信夫などで入ることが多かった

 当時、今も?私はアソコが小さくて毛も生えてなかったんだけど、尾崎君は立派なモノを持っていて、私はよくからかわれた


 尾崎君は田中君のモノを見て

「オマエちっこいのぉ〜」

 と言ってだんだけど、

 田中君は、

「男は大きさちゃうわ」

 などと言い返してはいたが、なんだか負けた感が出ていたようにも見えた


 そんな時、尾崎君が私に振ってきた


「雨夜君はど〜なん?」


 私は振られたくないから、無視して体を洗ってたんだけど無理やり尾崎君が私の股を開いてきた


「うわっ!田中より小さいやん!」


 私は恥ずかしくてたまらなかった


 田中君は、自分より小さい私がいたことに安堵したのか

「ホンマや!スモールやん。」

 と言ってきた。


 尾崎君は田中君を馬鹿にしたかったのか

「オマエも人のこと言えんぞ!このポークビッツ」

 と指をさして笑っていた。


 だが、田中君も反撃した


「うるさいねんビッグ!オマエなんかジャンボ尾崎やんけ!このジャンボ」



 この日から数週間、私たちはビッグ、ポークビッツ、スモールと呼び合うようになってしまった



 そんなある日のこと、私が岡本君こと、アッ君に鈴木君と尾崎君が喧嘩したことを話していたら面倒臭いことになってしまった。


「鈴木も施設なんや。なんか、あいつキモいねんなぁ」

 とアッ君は言って、鈴木君を教室に呼び出した。


 机や椅子を隅っこに寄せて中央に岡本軍団と鈴木君とが教室の中にいる形になった。


「おぅ!鈴木。オマエ施設で調子乗ってるらしいな。タイマンボクシングしようや」


 そう言って鈴木君に対戦相手を選ぶように言った。

 鈴木君からしたらたまったもんじゃない!

 なんで呼び出されたのかも解らず、しかもいきなりタイマンしろって…


 鈴木君は仕方なく?相手を選び始めた


 鈴木君が選んだ相手はタケ君だった。


 タケ君は、どちらかというと小柄な方で鈴木君より少し小さい感じだった。


 アッ君は

「おぉ!タケ、オマエご指名やで。ナメられたもんやのぅ」

 と、タケ君に言った。

 タケ君も

「マジか。なんかバリムカつくやん!」

 と、少しキレ気味に言った。


 私の中では、優しそうなタケ君だったが、意外に喧嘩が強いのかも?と思った。


 アッ君が

「はい!カーン!」

 と、ゴングの鐘のように言った


 キレ気味のタケ君は、フックで鈴木君の腹を殴って、鈴木君は腹を抑えて少し前屈みになった。

 すかさずタケ君は前屈みの鈴木君の背中に肘を打ちつけた

 5〜6発くらい肘打ちを背中に喰らわせたところに今度は高速で膝蹴りを腹に入れ始めた。


 鈴木君は、跪いて呻いていた。


「ちょっ…勘弁してよ」

 鈴木君は全く戦力を失っていた。


 アッ君は、

「タケではレベル違いすぎたんか?」

「雨夜やってみいや。俺ら、雨夜んことあんま知らんしな」

 と、言った。


「え?俺?」

 と、私は思ったけど、ここで弱みは見せられないと思って

「わかった」

 と、答え私は鈴木君の方へ向かった。


 私は内心、

「俺、別に今は鈴木のことムカついてないしなぁ」

 と思っていた


 どちらかというと私は知らない人にはキレるけど、知ってる人には中々キレられない。

 どうやってムカついてない相手と喧嘩したらいいんだ?


 とりあえず顔はやめとこうと思って、私も腹を殴り膝蹴りをして、調子に乗って回し蹴りを鈴木君の腹に入れてとどめをさした。


 鈴木君は

「もう、勘弁してよ。俺なんもしてないし」

 と言って謝った。


 アッ君は

「雨夜!オマエちゃんと鈴木に言ったれや!あんま調子乗んなよってな」


 と、私に言った。


 私も調子に乗って中指を立てながら

「カラス!オマエ調子乗ってんなよ。次また調子乗っとったらシバクで!」

 と言った。


 この大袈裟なパフォーマンスにみんなは大爆笑だった。


 心の中で私は鈴木君に謝っていた。


 その後、本当に私と鈴木君がタイマンすることになるとはこの時は知る由もなかった

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