第47話 喫煙所
渉に誘われた私はトイレに向かった。
中庭のトイレだった。
トイレに入ると先客がいた。
違うクラスの小林君と、通称タケ君がいた。
小林君はアシベと呼ばれていた。なんでやろ?
「渉、待ちくたびれたぞ!ヤニ持ってるやろ!」
アシベにそう言われた渉は太腿の辺りが太くなったズボンのポケットからタバコを取り出した。
「早よぉ、くれや。」
とアシベが急かすと、渉は1本抜くと、アシベは箱の方を取り1本抜くと自分で火を点けた。
もう1本抜くと、タケに渡した。
「おまえも吸うんか?」
と、私に聞いてきたので
「ありがとう。」
と、手を差し延べた。
渉が、私を紹介してくれた。
ガチャ!
その時、トイレのドア開いた。
2人の長身イケメンが入ってきた。
岡本君、通称アッ君と、中村君、通称パパだった。
その他にも2~3人入ってきた。
トイレは満員になってしまった。
みんな煙草を吸いにきて、火を点け始めた。
そう、ここはトイレという名の喫煙所だった
私はみんな歩きタバコとかしないでちゃんと喫煙所を作って偉い!って思ってた(いや、中学生なんだからダメじゃないか)
私は煙草って煙りだけ出してればいいのかと思っていたら
「おまえ、ふかしすんなよ。」
と、アシベに言われた。
私は、
「え?ふかしって?」
「煙り吸ったら、スーっと吸ってみぃ。」
とアシベ。
「ゲホっ②」
私はムセてしまった。
みんなに笑われたが、なんだか新しい友達ができた気がして嬉しかった。
「雨夜!次の休み時間、菓子屋に来いや。」
と、アッ君に言われた。
トイレの手洗い器の排水口は煙草でいっぱいになっていた。どうやらここが灰皿らしい。
みんな、そこに煙草を投げ捨てていっては中庭に出て行った。
「渉!!おまえ、ジュース買ってこいや。」
アッ君は、そう言うと渉に金を渡した。
すると、次々にアシベ、タケ、パパたちがお金を渡してジュースを頼んだ。
よくまぁ、何人分ものジュースを覚えられるもんだなぁ、と私は感心した。
その記憶力は勉強に活かせなかったのか?とか、将来は居酒屋で大活躍か?と、私は思ってしまった。
アシベは私のジュースも奢ってくれた。
当然、学園の私は金を持ってなかった。
トイレを出たら先輩がアッ君に声をかけた。
「おー。岡本軍団の登場か。木嶋んトコとは、まだ仲悪いんか?」
「まぁ…。」
と、アッ君。
アッ君は、この中のリーダーらしく木嶋という人と揉めているようだった。
後で話に聞くと、アッ君も転校してきて初日に2年をシメたらしい
その時に元々2年を仕切ってた木嶋君と対立したみたいだった
と、
その時、ちょうど渉が帰ってきた。
みんなに買ってきたジュースを渉が配っていると、アッ君と話していた先輩が、
「おぉ!渉。タイミングえぇのぉ~。ちょぃ、欲しいCDあるから若江のイズミヤ行って買ってきてくれや!」
と、渉に言った。
「あ…はいっ!!」
と、渉は金を受け取り、隣の隣の駅くらいまで自転車を走らせた。
そして、とうとう渉は次の授業には戻ってこなかった。
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