第40話 補導
電車に乗って行き着いた先は地下鉄の西中島南方駅だった。
そこから、30分くらい歩いたところは小学生の時に見慣れた風景だった。
私は、それを懐かしむように歩いた。
別に何処かを頼るわけでもなく、ただ…ただ…知ってる道を歩いた。
歩きながら…
もう、ひとりで生きていこう
きっとそれが自分の周りにいる人たちのためにもなる
俺は親父が死んだ時から結局ひとりなんだ
始めから孤独の道を歩まなかったから周りに迷惑をかけてしまう
そんなことを考えた
柾君の米屋の前に来た。
逢いたいけど、こんな形で逢っても迷惑をかけるだけだ
しかも、叔父さんたちに見つかってしまう…
私は更に歩いた。
崇禅寺駅から、淡路駅方面に歩いた。
淡路方面に歩くとキリスト教教病院というのがある。(現在は移転している)
崇禅寺を見て親父を思い出した
ここで親父の骨を預かってもらっていたからだ
親父ならきっと
「男ならひとりでも強く生きろ!」
そう言っただろう。
少し歩いたところに、脇田拓磨ことたっくんやドラクエの公式ガイドブックを借りたまんまやった松下君が住んでいた。
そういえば4年生くらいの時に、この近くに住む小林未知数こと、ミッチも住んでいたな。
ミッチは頭が良くて4年生にして夏休みの自由研究か何かで嘘発見機を作っていた。
ミッチの家にはウォシュレットがあって、当時初めて見た。
「なんか、トイレにボタンあるやん…」
私はボタンを押してみた
便器からお尻を洗うお水が出てきて、当時はなんのこっちゃか解らないから慌ててトイレから出て、ミッチに
「お〜い。トイレがおしっこ出した!水浸しなってるから助けて〜」
と叫んだ記憶がある。
そんなことを思い出しながら、小学生の時にナンパしに行った淡路商店街に着いた。
もう、夜中に近い時間だったが、暇潰しにゲームセンターに入った。
やり慣れたストリートファイター2があったから、それをやった。
150円しかなかったが、1ゲーム50円で最後までいければ30分は持つ。
だが、運悪く5人目くらいでやられた。
ついでに蛍の光が流れ始めたのでゲームセンターをあとにした。
むしょうに喉が渇いてきた。
最後の100円でジュースを買おうとした時、コロコロっと。自販機の下に100円玉は潜り込んでしまった。
「あぁ…最後の100円がぁ~」
と、私は蚊の鳴くような声で言った。
と、自販機の下を覗いてみると、自分の100円の隣に、もう100円。また、その隣に10円。
なんと、自販機の下は金の宝庫だったのだ。
私は喜んで、近くにあった棒キレで、自分の落としたお金を手の届く範囲に掻き出した。
「やったぁ!!…1370円になった。」
にっこりしながら私はジュースを買った。
他の自販機の下にも、まだお金が落ちているかもしれない…と、思い、あちこち探し回った。
結局いちばん落ちていたのは煙草の自販機の前だった。
凄いとこは500円玉も落ちていた。
明け方、眠くなって郵便局のシャッターの前で寝た。
他にも、酔っ払ってる人や、終電を逃した人たちも寝てたりしたので、私が寝ていても不自然ではないだろうと思っていた。
実際、中2くらいのガキが寝てたらおかしいって(笑)
太陽が出始めた頃、私はまた自販機巡りをした。
たまたま、鍵のない自転車を見つけて、それに乗ってウロウロしていたら、数回、自転車に乗った同じ警察官と擦れ違い、職質を受けて、近くの交番に連れていかれた。
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