第37話 年末家出騒動

 板敷さんとの恋が実った…

 と思ってた


 私は初めて彼女ができたことに浮かれ、クラスの仲の良い友達みんなに板敷さんと付き合ったことを言い触らした。

 更に、竹之内こと、たけのーまであらぬ事を付け足したりしながら言いふらした。


 瞬く間に噂は広がり学年中知らない者はいないくらいになってしまった。

(板敷さんごめん。)



 そして、X'mas。


 たけのーと私はプレゼントを買いに出掛けた。

 たけのーは花キューピットという店で何かを買っていた。

 私はどの店だったか忘れたけどマグカップを買った。


 今、思い出すと…X'masにマグカップかぃ…。同棲とかしてたらペアでいいかも、やけど(笑)



 しかも付き合ったこと、普通言い触らすかぃな(笑)最低なやつです…はぃ…


 私とたけのーは、それぞれ、好きな相手にそのプレゼントを渡した。



「畷神社に行かへん?吉良も来るけど、御園や板敷も呼んでWデートになるでぇ~」


(吉良というのは5組の男の子です)


 と、たけのーに言われ



 断らなきゃいけないのに



「おぉ~!!めっちゃ楽しみやなぁ。キスとかできたらいいなぁ。」


 と、私は返事した。


 断らなきゃいけない理由とは、典子叔母さんに



「せっかく3人で新しい家族…、正月を迎えるんやから今年だけは一緒に年を越そう。だから出かけたらあかんで。」



 と、前もって言われていたからだ。



 典子叔母さんに



「たけのーと、付き合ってる彼女と一緒に初詣行きたいねんけど」とは言えなかった。


 そもそも正直に話すのも恥ずかしいし、叔母さんの言う、3人で新しい家族で一緒に迎えたい…。その気持ちも解るからだった。


 私は初めて家出した7歳の時を思い出した。


 せっかくできた友達や彼女と過ごしたいし、家出するしかないかなぁ…。


 そして、とうとう年末を迎えた。私は吉良の家に向かった。

 吉良の家に着くと、まもなくしてたけのーがチャリで来た。

 3人で御園さんや板敷さんと待ち合わせしていた四條畷駅に向かった。



 初詣に出掛けた私たちだったが、私は家を無断で出てきたことを気にしていた。


 たけのーや、吉良、御園さんや板敷さんは楽しそうに会話している中、私はその輪の中に入ることはなかった。

 板敷さんにも何を話せばいいものか…解らなかった。

 付き合っていると言っても、手紙を貰った時と、プレゼントを渡す時くらいしか話をしていなかった。(それは付き合ってるうちに入るのか?)



 それに、女の子すらふざけて話す程度だったから真面目に話をするとなると何を話せばいいか解らなかった。

 それよりも、今、自分のいない家がどうなってるのか…気になって仕方なかった。


 除夜の鐘が鳴り響き、新しい年を迎えた。



 御園さんと板敷さんは1時を過ぎた頃



「そろそろ帰るわ」



 と、言って帰った。


 その後も、私と、たけのーと、吉良は少し喋っていた。



 吉良は私に



「雨夜…言いにくいけど板敷は多分お前のこと好きちゃうかも」



「そうか…」


 と、私。



「そんなんでいいんか?家出までしてきたのに…。」


 と、たけのー。



 私は


「家出したんは俺が自分で勝手にしたことやし、好きじゃないんやったら仕方ないよ。実際、俺もホンマに好きかどうかは解らん。」



 と、強がりだけど本音を言った。



 少しすると、吉良は


「俺はもう、帰るけど雨夜はどうすんねん!家、帰った方がいいで。」


 と言い残し、帰っていった。



 たけのーの家の近くまで来た時、


「雨夜ホンマに家に帰らへんのか?どこ行くねん。」


 と、たけのーに言われた。


 私は、


「寒いし畷生会にでもおるわ。」


 と、答えた。



 畷生会とは、家の近所の病院で、救急のための入口が開いているため、こっそり中に入れたのである。



 たけのーは


「んじゃ、飯くらい持っていけたら持って行くわ。」

 と言ってくれた。


 その時、車のクラクションが後ろの方から響いた。


 私と、たけのーは自分達が邪魔なのかと思い、一列になって端に寄ったが、しつこくクラクションを鳴らされた。


 後ろを振り返ると

 重春叔父さんが乗った車だった

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