第30話 始業式の問題発言

 四條畷市立四條畷西中学校

 この学校は近くの3つくらいの小学校の卒業生が来るみたいだった。


 私はもちろん、そんなの関係なかった。周りに知ってる奴なんてひとりもいなかった。


 入学式の時、私のクラスは6組になったことが解った。


 教室に入り、色んな説明の後、眼鏡をかけたヒョロっと痩せた男の担任、大谷先生が私を紹介した。



「市内の方から引越してきた雨夜優里さんや。」



 私は


「よろしく!」



 とだけ言った。


 始業式の日、まだ慣れない道を通いながら、

『この学校での私はどんな私になるのかな?』

 そんなことを考えながら歩いた。



 そして、始業式が始まった。

 体育館に全校生徒が集まり、先生方の離任式もすることになっていた。

 まずは校長のお決まりの長い話が始まった。



「え~…。だから…。あ~、い~」


 私が眠くなりそうにな時にやっと校長先生の話は終わった。

 終わった時は全校生徒もうんざりした顔になっていた。


 その後、離任式が始まった。

 離任される先生方の挨拶が順に済まされる。



 私は、その先生たちが何を話していたかは覚えてないが、この時、四條畷西中学校創立以来のアホ伝説を作ることになってしまった。


 離任する先生のひとりが挨拶をした後、クイズみたいな豆知識を話し出した。

「みなさん。ゴリラの頭のてっぺんは尖っているのを知っていますか?では、何故ゴリラの頭は尖っているでしょう。解る方いますか?」



 と、その時、私は反射的に全校生徒の前で手を挙げた。



 一瞬間があってから



「はい。そこの1年生」



 と離任する先生が私を指差した。誰もがポカンとしていた。



 当然だろう。誰がわざわざ全校生徒の前で手を挙げて答える奴がいる…普通はみんなそう思うだろう。



 その中で手を挙げた奴がいたのだから驚く筈である。

 全校生徒の視線が私に釘付けだ。


 みんな、何を答えるんだ?頭いいのか?あいつ。様々に考えた筈である。



 私は心臓をドキドキしながら立ち上がった。

 みんなの期待を大きく上回る答えが私の口から飛び出した。

 私は


「ゴ 」・「リ」・「ラ」


「やからぁ~」


 とゆっくりした口調で、ハッキリと叫んでいた。



 いつの間にか挙手し、変なことを叫んでいた私は正真正銘のアホだった。


 全校生徒700人近くいた体育館は静まり返った後、大爆笑に包まれた。


 この時私は「やった!ウケた。これで私は、この学校でヒーローだ。人気者だ。」


 という思いでいっぱいだったが、教室に戻った瞬間、その思いは間違いだったことに気付かされた。


 担任の大谷先生は明石家さんまを意識してるのか、そんな話し方をする先生だった。


 この時も


「アホぉ~手ぇ挙げた瞬間…天才転校生かと思ったわ。なんやねんアレわ…はぁ…。この先1年間先が思いやられるような奴を担任に持ってしまったわ。」


 と、ため息混じりに言われてしまった。

 始業式が終わった次の日のも、全校生徒の前で恥を晒した私を見に来る人で溢れた。



「小学生の時とはウケ方が違うのか?」



 などと考えていた私は本当にアホだったかもしれない…。


 一応人気者?になった私の中学生生活の始まりだった。


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