第17話 変化
翌日から俺の生活は少し変化した。朝はいつものように植田と学校に行く。そして、いつも話しかけてくれていた高田さんは俺には「おはよう」というのみで、それ以上の会話は無かった。麦島さんが俺のところに来ることも無くなった。
昼休み。俺は彼らと昼食を共にせず、主に大田たちのグループに居た。ゲームやアニメが好きな連中だ。でも、ときどきは一人になりたくて屋上や中庭で食べたりもした。
植田は高田さんや麦島さんと遊びに行ったりもしているようだが、俺が誘われることは当然無い。一人で家に帰ることが多くなった。
そんな日々を続けていたある日、植田が俺に言った。
「久しぶりに遊びに行こうぜ」
「珍しいな、二人でか」
「いや、美柑も一緒だ」
「美柑も? 相良は?」
「部活だよ。終わるのを待つまで俺たちと遊ぶだけだ」
「何するんだ?」
「カラオケだ。すぐ近くにあるだろ」
「うーん……」
「あいつらは呼ばないから。たまには羽目外そうぜ」
あいつらとは高田さんと麦島さんか。
「分かったよ」
そういうわけで俺は久しぶりに植田と美柑と共にカラオケボックスに来ていた。
美柑はまた植田を彼氏代わりにして遊ぶのだろう。と思ったが今日は植田に近づく気配はない。
「今日は相良に許可得てるんだよな」
部屋に入り、美柑に聞いてみた。
「うん、もちろん。萩原っちを元気づけてやってくれ、って言われたよ」
「そ、そうなんだ」
相変わらず相良はいいやつだ。
「だから、今日は美柑ちゃんが萩原っちの彼女役やってあげます!」
そう言って、俺の隣に座る。距離が近い。
「ねえ、萩原っち、元気出して」
そう言って俺を上目遣いに見ながら腕を触ってくる。
「お前、そこまでしていいとは相良に言われてないだろ」
「え、まだ何もしてないけど」
「触ってるから」
「これぐらい別にいいでしょ。ミッチーの許可なんていらないよ。変なとこ触ろうとしてないんだから」
「変なとこって、お前なあ……」
美柑がそういうことを俺に言ってくるのは初めてで不覚にも少しドキドキしてしまう。
そういえば、こいつと相良ってどこまで進んでるんだろう。こいつの感じからするとやっぱ最後までだよなあ。ということはこんな可愛い顔してやることやってるわけか。
「ん? 何?」
美柑の顔をじっと見てしまっていた俺に美柑が言う。
「いやあ、どこまで進んでるんだろうなあって思って」
「え、ミッチーと? そんなの言えるわけ無いでしょ」
そう言って俺の背中を叩いた。
「いってえな」
「もしかして想像しちゃってる?」
「するかよ」
ほんとはしてるけど。
「こう見えて私たちは健全だからね。ミッチーもそういうの厳しいし」
「そうなんだ」
「うん。だからちょっと欲求不満がね。たまってるかも」
そう言って俺の腕に抱きついてくる。
「お前なあ……やめろって」
「あら、元気にならない?」
「元気には……なるけど」
思わず正直に言ってしまった。
「でしょ? 今日は元気出して」
美柑がさらに調子に乗る。見ている植田は何も言って来なかった。
結局、この日のカラオケの俺は妙にハイテンションになった。
確かに元気にはなったから美柑には感謝だな。だけど、相良には今日の詳しい話は内緒にした方が良さそうだ。
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