第12話 朝
翌日の朝、やはり今日も高田さんが話しかけに来た。だが、今日はいつもと違い、麦島さんも隣に居る。
「は、萩原君……これちょっと教えて欲しいんだけど」
高田さんは少し緊張しているように見えた。最近はいつも高田さんの質問にちゃんと答えないからだろう。
「うん、いいよ」
「ほんと? ここがちょっとね……」
高田さんはいつものように話し出す。俺は聞きながらも隣に居る麦島さんをちらりと見た。すると、少し笑顔で俺を見て頷いてくれた。それを見て俺は昔のような感じで高田さんと話すことが出来た。
「有佐、もう行かないと。萩原君も困ってるよ」
少し時間が経ったところで麦島さんが高田さんに言ってくれた。
「あ、奈保美、居たんだ。珍しい」
「何よ、別にいいでしょ。行こ」
2人は自分の席に向かった。
俺は麦島さんにスマホでメッセージを送った。
萩原『ありがとう』
麦島『別に。ただ横にいただけよ』
それでやりとりは終わったかと思ったら、しばらくしてまたメッセージが来た。
麦島『昨日はああ言ったけど、ほんとに話しかけに行っていいの?』
萩原『もちろん。来てくれたら嬉しい』
麦島『わかった』
麦島さんがほんとに話しかけて来てくれるんだろうか。
ドキドキしながら次の休み時間を迎えた。すると、麦島さんが本当に俺の席のところまで来た。
「来たよ」
「あ、うん……」
「何? 緊張してるの?」
「ちょっと」
「ただ雑談するだけでしょ。気軽に話そうよ」
「そ、そうだね」
「さっきは有佐とちゃんと話せてたよね」
「うん。久しぶりの感覚だったかな。となりに麦島さんが居てくれたからだと思う」
「そうなんだ。どうして私が居たら話せたの?」
「なんでだろうね……うーん、安心したのかも」
「安心?」
「うん。俺の気持ちを分かってくれる人が居るって」
高田さんは俺の気持ちを考えずに話していたし。
「そっか、だったら――」
「奈保美、萩原君と何話してるの?」
そこに、高田さんが来た。
「別に……少し雑談よ」
「ふーん、珍しいね」
「そんなことないでしょ。お昼はいつも一緒だし」
「そうだけど、そんなに話してたっけ?」
「今までは話してないけどね。これからは話そうかと思って」
「そ、そうなんだ……」
「うん、萩原君。有佐ともどもよろしくね」
「あ、うん……」
「じゃあ、席に戻るから」
そう言って麦島さんは一人で席に戻っていった。
「何か怪しいなあ」
高田さんが俺を見て言う。
「べ、別に怪しくないし」
「その態度が怪しい」
「なんでだよ」
「……ふふ、でもこんなに楽しく話せたの久しぶりかもね」
「そ、そうだな」
「萩原君……あのときのことだけど――」
あのときって、告白のときだろうか……そう思ったときだった。
「よーし、授業始めるぞ。席に着け」
そこに先生がやってきた。
「あ、じゃあまた後でね」
高田さんは慌てて席に戻り、話の続きを聞くことは出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます