Breaking Down

kai

1−1

 俺は重たいリュックを背負い、立ち上がった。

「よし、行くか」

 早朝から登山へ向かった。

 家を出ると左手に山が見える。

 空は薄暗く、太陽が出始めているところだった。

 俺は趣味で登山をしている。

 御在所へ向かっていく。

 富士山、西穂高岳、塔ノ岳などなど登ったことがあるが鈴鹿山脈を登るのは初めてだ。

 鈴鹿山脈にはたくさんの山がある。

 藤原岳、竜ヶ岳、釈迦ヶ岳、雨乞岳、鎌ヶ岳、入道ヶ岳。

『鈴鹿セブンマウンテン』と呼ばれているらしい。

 俺が今回鈴鹿山脈を選んだのには理由がある。

 一つは趣味目的。

 もう一つは、妖怪がいるか確かめるためだ。

 大学の飲み会で聞いた話だ。

 「鈴鹿山脈にはなにか妖怪がいるらしい。」

 友人が飲み会で言っていた。

 『妖怪』という言葉に引っかかった。

 幼いときに鈴鹿山脈には妖怪が居ると聞いたことがある。

 このまま御在所の頂上へ慣れた手つきで向かっていく。

 無我夢中に登っていたら、いつの間にか昼になっていた。

 「お腹空いたな」

 そんなことをつぶやきながら、ただ静かに進んでいく。

 時間が経つとともに腹の減り具合は増していく。

 とりあえず、昼飯を食べるところを探しながら頂上を目指すことにした。

「あった……」

 山小屋を見つけた。

 とりあえず山小屋に入り、昼食を取る準備をした。

 中に入りカバンから曲げわっぱの弁当を取り出した。

 ワクワクしながらお弁当を開けた。

 今日は贅沢な鮭弁当にした。

 具材はご飯に梅干し、メインに焼き鮭。

 鮭がご飯にあって、ご飯がガツガツ進む。

 ふと見た窓からの景色はすごかったが、頂上から見た景色には敵わない。

 そう考えながら食べ進めた。

 食べ終わり、一息休憩をしてから行こう。

 そう考えた。

 一息程度の休憩してから三十分くらいたっだろうか。

 また登る準備をした。

 食べ終わったお弁当箱をしまい紐を締めてリュックを背負った。

 山小屋を出て頂上に向かうため登山を再開した。

 頂上についたときの絶景を期待しながら登った。

 「着いた……」

 頂上に着いた。

 着いた頃には夕方になっていた。

 俺以外に人は見当たらなかった。

 街を見下ろすと

 日が沈んで入る途中だったので街と夕日が重なって

 俺が今までで見た中の最高の景色だった。

 みんな下山していることだろう。

 写真を一枚取って降りる準備をした。



 あれからどれだけ歩いただろう。

 出口が見つからない。

 元の道に戻っているはずなのに。

 一度止まってリュックから方位磁針を出した。

 方位磁針を片手に持って、進み続ける。

 襲われたとしても、方位磁針にはナイフがあるから基本はしのげる。

 方位磁針を見たら針が狂っていた。

 「まじかよ……」

 もう進むしかない。

 方位磁針をカバンに片付けてから

 木々の間を進んでゆく。

 歩いていると俺は一本道に迷い込んだ。

 平坦を何周もしているような感じがする。

 歩き続ければ、すべてがどうでも良くなってくる。

 歩けば歩くほど希望がなくなってくる。

 「どうすれば……」

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