『ビー』

ビー。探偵。


「貴方は何者?」


少女は無情な眼を探偵へと向ける。


「私は自分のことを『探偵』と呼ぶ。これは自意識からではなく、私が『探偵』であるからである。」


少女は理解しているのかいないのか分からない無表情で、じっと見つめてくる。


「私はただ隠れた真実を探るだけ。そうだ。君は何者だ?」


「貴方は聡明。それなのに無駄な質問ばかりしている。どうして?貴方は分かっているはず。こんなの殺人じゃないと。」


その言葉に思わず返答に詰まった。どうやら探偵、いや"私"の想定を超えた存在らしい。


「見せているのだよ。」


「誰に?」


「この事件の首謀者と、そう君に。」


「私?」


彼女はその小さな頭を傾かせた。その様子は不自然な少女から出たやっとの年相応のものに見えた。


「私の興味は最初から君なのだよ。可憐なワトソンくん。」


すると今度はクスクスと肩を揺らした。


「ふふ、その名前。久しぶりに聴いた。でも、残念ながら私はワトソンじゃない。」


「そうか…」


私はこれ以上の話は無意味だと悟り、次の容疑者の元へと立ち上がった。すると、彼女が私のコートを掴み、言った。


「でも会ったことはある。」


その真意を聞くこともできたが、私はそれをやめた。怖かったのかもしれない。何が?私、いや探偵が怖がったのか?


こんがらがる脳内を抑えながら次の容疑者の部屋へと向かった。

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