悪女にもなりたくてなった訳ではない

@kyomu4245

プロローグ悪女と嘘つき


 小学生の頃、授業の一環で自分は何に例えるか?という質問をされた事がある。

 花と答えるお淑やかな女。

 完璧超人と答えるアホ男。

 天才と答えるマジモンの天才。

 様々な事を答える子供の中。

 

『はい!次は譃芭羅 うそばら くん』

『はい』


 狭い教室の中、教卓に立っていた担任の先生が俺に目線を向け、名前を呼ぶ。

 それに答えるように俺は立ち上がる。

 同時に楽しい会話やザワザワとした空気が一瞬にして冷め、皆目の前の黒板を見つめる。

 まるでその男の会話なんて聞きたくないような。

 俺はそんな空気を気にせず深呼吸をする。

 そして、一言だけ口から吐き出す。


『クズ人間……ってみんなから言われてます』

『え?……みんなまた嘘芭羅くんをいじめてるですか?!』


 サラッと、まるでもう言う準備が出来ていたのかというほど軽々と爆弾を落とす。

 さらに俺の発言でまた一変する。

 ある者は黙り。

 ある者は無駄に反応し。

 ある者は俺に殴りかかろうとする。

  四字熟語の中に自己欺瞞と言う言葉がある。

 自分の心を偽ってあたかも本心を言ったと自らを騙す事である。

 人は意識的にまたは無意識に噓を吐く。

 それは自分を守るために、またや人を欺き自分が優位に立つために使う遥か昔から使われている一種の話術だ。

 噓は便利で時に快楽を与えてくれる麻薬物質を放出するが逆も存在する。

 俺もその中の一人……嘘をついて人の反応を楽しみ脳内麻薬を分泌し、ストレスのはけ口にしていた。

 ちなみ今回は本当を混ぜた嘘だ。

 何人か影で呼んでおりそれを偶然聞き、ストレス発散として全員になすり付ければ面白そうだなと。

 まぁおかげで新しい敵を作ってしまったがさらに嘘で相手を騙し壊してしまえばいいか。

 そんな事をしていたら俺の周りには……誰もいなくなった。

 まぁそれはそうだ。

 それでいい……これでいいとそう思っていた。

 そこから時は流れ、高校2年の頃、一身上の都合に一人暮らしをする事になり、元々いた東京から隣の名古屋に引越し

てきた。

 学校も新しくなった事により、俺もある事情から性格を見直す事にした。

 嘘をつかずに会話していこうと。

 初めての新しい学校……どんな事が起こるのか新たな学びやの扉を開け放つ。


「だから言っているでしょう?貴方はブスなのだから騒がないで貰える?」


 開け放つと同時に部屋からお淑やかな声でかなりえぐい言葉を放つ女子が立っていた。

 俺と同じ学校の服を着て、本来先生がいるはずの教卓の前で腕を組み、涼しげな顔をしていた。

 そして彼女の前には今にも泣きそうになっているお世辞でも言えない太った女子がいた。

 ……いやこの状況どゆこと?

 

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