第12話──失われた声、静寂の囁き

了解です。第12話も感情豊かに、伏線を散りばめつつ緻密に紡ぎますね。



🔥『曇天の下で火は笑う』


第12話 ──失われた声、静寂の囁き



夜の帳が降りる廃墟の街。

イサクラはひとり、朽ち果てた図書館の奥深くで埃をかぶった日記帳を手にしていた。

そのページには、何年も忘れ去られた誰かの叫びが隠されているようだった。


日記の持ち主は、かつてこの街で教師をしていた人物。

その記録は、誰もが触れたがらなかった過去の断片。

息子の死と火曜会の暗号を繋ぐ、重要なヒントが散りばめられている。


ふと背後で足音が響く。

振り返ると、薄暗い廊下にユリが立っていた。

「イサクラさん、これを見つけたの…あなたに伝えたいことがある。」


二人は日記を開き、かつて封印された記憶を少しずつ紐解いていく。

そこには、町の崩壊に関わる密約、裏切り、そして“声なき者たち”の怨念が綴られていた。


ユリの声は震えながらも強くなった。

「私たちの痛みは、誰かの沈黙によってさらに深くなる。

だけど、今ここで声を上げなければ、すべてが闇に飲み込まれてしまう。」


イサクラの胸の奥で、息子の顔が浮かんだ。

「あの日、何が起こったのか…本当のことを知らなければ、赦しも再生もない。」


日記の一節が指し示す、失われた声の正体とは何か。

廃墟の闇に潜む静寂が、彼らの前に新たな問いを投げかける。


遠くからまたあの笑い声が聞こえた。

今度は以前よりも一層、冷たく深く、彼らの心に刺さった。

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