第3話 「スライムの声と、初めての救い」

森(もり)の奥(おく)で助(たす)けたスライム――ナナは、ユキの肩(かた)に乗(の)ってぷるぷる震(ふる)えていた。


「ほんとに大丈夫(だいじょうぶ)? 無理(むり)しないでね」


「うん……でも、なんかユキの近(ちか)くにいると落(お)ち着(つ)くんだ」


不思議(ふしぎ)な感覚(かんかく)。

まるで“波長(はちょう)”が合(あ)うかのように、ナナはユキに懐(なつ)いていた。


(……これも、チート能力(のうりょく)のひとつ?)


思(おも)い返(かえ)してみても、自分(じぶん)には特別(とくべつ)な力(ちから)を授(さず)かったという記憶(きおく)はない。

でも、あの魔法陣(まほうじん)を無意識(むいしき)に解除(かいじょ)できたのも、ナナと心(こころ)を通(つう)じさせたのも、普通(ふつう)じゃない気(き)がする。


「ユキー! どこ行(い)ったのー!」


森(もり)の方(ほう)からレイナの声(こえ)が聞(き)こえた。


「ごめん、すぐ戻(もど)る!」


慌(あわ)てて走(はし)り出(だ)すと、ナナが肩(かた)からぽよんと跳(と)ねて後(うし)ろをついてくる。


村(むら)に戻(もど)ると、心配(しんぱい)そうな子(こ)どもたちと、先程(さきほど)の老人(ろうじん)が待(ま)っていた。


「無事(ぶじ)でよかった……」


「ごめんなさい、ちょっと迷(まよ)っちゃって……」


嘘(うそ)ではない。けれど、ナナの存在(そんざい)はまだ秘密(ひみつ)にしておきたかった。


「それはともかく、その肩(かた)の子(こ)は……?」


ナナがひょこっと顔(かお)を出(だ)してしまった。


「えっと……森(もり)で弱(よわ)ってたスライムで……助(たす)けてあげたんです」


子(こ)どもたちは興味津々(きょうみしんしん)でナナを囲(かこ)む。


「わあ、かわいい!」


「このスライム、しゃべるの?」


「……う、うん。ちょっとだけ」


ナナは恥(は)ずかしがりながらも、静(しず)かに「こんにちは」と挨拶(あいさつ)した。


その声(こえ)に、子(こ)どもたちは目(め)を輝(かがや)かせる。


こうしてナナは、村(むら)の“みんなの友達(ともだち)”として迎(むか)え入(い)れられた。


(よかった……本当(ほんとう)によかった)


ユキは小(ちい)さく笑(わら)って空(そら)を見上(みあ)げた。

その目(め)にはまだ気(き)づいていない。

――また一(ひと)つ、“特別(とくべつ)な力(ちから)”が目覚(めざ)めたことに。

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