第26話 桜井春の相談事

 まず一つ目の課題。それは桜井のことが心配だということだ。


 北野と俺と桜井で勉強会をした日に、俺は桜井を怒らせた。それで動揺した桜井が帰ってしまったのだ。後で北野が彼女をフォローしてなんとかなったようだが。

 とりあえずその後、学校で会う時は謝ったけど。本人はどう思っているのだろう?


※※※


『風邪、ひいたみたいなの』


翌日の登校時のことだった。学校の正門を抜けると北野咲からのメッセージが来た。

俺はそれを見て考えた。


昨日、北野は雨に当たったわけではないけど疲れているみたいだ。

うん、無理しないでほしいな。


俺は心の中でそうつぶやいた。

そして返信。すると。


『ありがとう ❤』 



俺は画面を凝視した。


「!!!!!!!!!!!!!」


 俺は心臓を撃ち抜かれるのではないかと思った。スマホの画面にある、たったひとつのハート。それだけで、俺の思考が全部ふっとんだ。文末に ❤ が付いているだけなのに、この破壊力だ。


北野さん、やっぱり強すぎる。

俺はくらくらした。


昇降口に来て俺は歩いていてふらっと揺れたからだろうか。心配されるような声が後ろからかかった。


「おはよう! 青山君。大丈夫?」


俺が振り返るとそこには桜井春がいた。

三人で勉強会をしたあの時、桜井は怒って帰ってしまったのだ。

本人は酷く動揺していたと北野が言っていた。だから心配だった。

そうだ、何か言わないとな。


「おはよう桜井さん……もう、大丈夫なの?」


俺はメッセージをみて動揺していた素振りを誤魔化そうと、スマホをポケットにしまった。


「うん、ありがとう心配してくれて」


「いや……別に……。そうか。よかった」


 桜井の元気そうな姿があってほっとした。一時はどうなるかと思っていたけど。

 すると、桜井が言った。


「ねえ、昼休みに時間あるかな?」


「え? 大丈夫だけど、どうかした?」


「実は、相談があって」


そう彼女は話を切り出そうとした。なんだか遠慮ぎみだが何か話したい様子だ。


 何だろう? 不安しかない。 俺はそう思った。

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