怪奇パラドックス
村松秀
プロローグ
最近、この学校に病が蔓延している。
その病にかかったとて身体に害をなすわけではないが、ある事について口が軽くなってしまうらしい。
その証拠に教室を見てくれ。
一見すると会話の絶えない和気藹々とした昼休みに思えるだろう。
だが。
よく聞けば、この状況がいかに異常なのかが分かるはずだ。
——この教室のクラスメイト、内容は違えど全員、同じ事を話している。
そう、全員が。
最初に感染が確認されたのは期末試験期間中。
次の試験に向けて勉強するクラスメイトが多い中、一部の人が現実から逃避するために始めた、そんな印象しか受けなかった。
それがどうだ。
試験が終わるや否や瞬く間に感染が広がり、今や生存者は俺ぐらいといったところだろう。
できればこのまま何も知らないで試験の疲れをゆっくり癒しながら穏便に夏休みを迎えたいところなのだが、どうやらそれは叶わないらしい。
見ろよ、こっちにズカズカと歩いてくるアイツの顔。
あれはどう見ても感染している。
そして移す気マンマンとみた。
まあ、流行の波が立つ前にサーフィンに出向くようなヤツだ。病にはだいぶ前から罹っているはずで、俺が移されなかったのは、試験が午前中に終わって直帰していたからに他ならない。
と、こうして話している間にヤツは俺の席に着くなり断りもなく俺の机を不法占拠して、夏休みの到来を意気揚々に唄いながらタッパウェアを包んだナプキンを解き始めた。
どうやら時間らしい。
おっと、閉じないでくれよ。ここまで読んでくれたんだ、今更逃げるなんてのはナシだぜ。
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