シンパシーサイド
.六条河原おにびんびn
第1話
「超優秀な人型ロボットってのがいたんだわ。あったんだわ、か。いけない、いけない。超優秀だけあって、存在感というか、まぁ、質感とか喋り方も人間みたいなんだわな。抑揚とかニュアンスを上手いこと学習するんだわ。表情解析なんかも高性能でよ。
ロボットっていうと、人の気持ちの機微が分からんってイメージでしょうが、所詮は人間も化学と数字、物理の塊に過ぎませんや。電流で脳味噌を誤魔化せば、恋愛感情だっていじれるんじゃないんか。そんないい加減な人間同士だって様々なのに、画一化された金属の塊にどう太刀打ちしろってんだ。でも意外と、感情が邪魔になる場面ではそういう金属のお人形に頼るってことも必要なもんだ。意外……ではないな。
それで、そのめちゃくちゃ優秀なロボットってやつの仕事だがよ、とある大学生の監視だったんだよ。何かあって
まぁ、じっくり時間をかけて、やがてそいつはロボットに今まであったことを語りかけ、肯定と同意、都合の良い受け答えをするロボットをすっかり精神の支柱にしやがりやがった。
多くの人間てやつは、或いは多くの場面では他人に呑まれる。気持ちなり距離なり、近ければ勝手に悲しみ、勝手に喜び、勝手に怒れる。それができるから上手く回ってられる部分もあるんだろうぜ。ただな、呑まれねぇやつもいて、そうでないやつにも呑まれない
それでな、その優秀なロボットはあまりにも多数派の人間を真似すぎて、呑まれることすら覚えやがった。いわば血肉も人権もねぇのに呑まれる側の人間ってやつになっちまった。大学生を理解して……しまいにはロボットのほうがその金属の体をアスファルトへ叩きつけに行ったってワケだ。するとどうなる?大学生もその身体をアスファルトを叩きつけに行ったのさ。あれはオレよりも兄弟してたんじゃねぇかって思うんだが、同時に、くだらねぇとも思う。どうして弟だからってアレを理解してやらねぇといけないのかと思う。あのロボットは兄貴の奴隷だったのさ。そのために開発された。それなら人間を真似て、人間を解する機能なんてつけてやるべきじゃなかった。ああ。オレまで感化されてるな……結局あれの優しさはデータ化されたものでそこに感情なんかあるワケないのによ」
<2022.1.23>
シンパシーサイド .六条河原おにびんびn @vivid-onibi
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