第27話 好きって言葉よりも深く

朝、目を覚ました瞬間。

隣にいる佐倉くんの寝顔が視界に入って、

一瞬、夢かと思った。


「……ほんとに、泊まったんだ、私」


寝癖のままの髪、いつもより無防備な表情。

それがなんだか、すごく“彼”らしくて、

胸がぎゅっとなった。


そっと、手に触れる。


それだけで心臓が跳ねる。

でも、繋がれた手を離したくなくて、そっと握り返した。


すると、彼の目がゆっくり開いて──


「……おはよ、しの。朝から可愛すぎ」


「い、言わないで……こっちこそ、寝顔、見てたんだから」


「え?マジか……恥ずかし……でも、見られてよかったかも」


「……どうして?」


「だってさ、こんな風に朝迎えられるの、しのだけだから」


彼が起き上がって、私の額にそっとキスを落とす。


「これ、毎朝の日課にしたいな。ダメ?」


「……ずるい。そんなの、断れるわけない」


ぎゅっと抱きしめられて、

背中に回された手が優しくて、

どこにも逃げられないくらい安心した。


* * *


「しの」


「なに?」


「今日も好きだよ」


その言葉だけで、

朝の静けさが、何よりもあたたかくなった。

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