第23話 しのに触れるのは、俺だけでいい

体育祭の片付けが終わった後、

校庭の隅でクラスメイトの男子に呼び止められた。


「しの、リレーすごかったな。てか、めっちゃ速くてさ…びっくりした」


「ありがとう。自分でもちょっと頑張ったかも」


そんな何気ない会話。

でも、その様子を少し離れた場所で見ていた佐倉くんの目が、どこか寂しそうだった。


* * *


帰り道、ふたりきりになったとき、

佐倉くんがぽつりとこぼした。


「さっき、話してたの……あいつ、絶対しののこと好きだよな」


「え?」


「……なんか、ムカついた。俺、こんなに好きなのに」


その言葉が、胸にじんわり響いた。


私は笑って、そっと彼の手を握る。


「大丈夫。私が好きなのは、佐倉くんだけだから」


* * *


すると彼が、ぎゅっと私の腰を引き寄せてささやいた。


「……しのに触れるのは、俺だけでいい」


花火よりもドキドキしたのは、間違いなくこの瞬間だった。

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