第11話 言えなかった言葉と、届いた想い

数週間ぶりに、私たちは少しギクシャクしていた。


佐倉くんは最近、なんだか冷たくて、

話しかけても短い返事ばかり。


私も、つい不安になって、余計なことを言ってしまった。


「なんで最近、そっけないの?」

「別に……」

「教えてよ、私が悪いの?」

「そうじゃない」


でも、その「そうじゃない」が本当にそうなのか、信じられなくて。


* * *


放課後、教室にひとり残っていると、彼がやってきた。


「……話、しよう」

「うん」


「俺さ、最近バイトが忙しくて……でも、おまえには心配かけたくなかったんだ」

「そうだったんだ……」


「ごめん。気持ちをちゃんと言えなくて」

「私も、素直になれなくて……」


ふたりの間の空気が、少しずつほどけていく。


「……大好きだよ、篠原」

「私も、大好き」


その言葉だけで、胸がじんわり温かくなった。


* * *


帰り道、ふたり並んで歩くと、

彼がふいに手を繋いできた。


「もう、離さないからな」

「うん」


その夜は、きっと忘れられない日になった。

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